PHANTASY FANTASY EPISODE]

ブラックブラッド崩壊から数年が経ったある日の事・・・

「こらぁー!いつまで寝てるの!?今日は依頼があるでしょ!早く起きてー!」
「んー・・・そうか、今日は依頼のある日だっけ」
「まったく、ホントお兄ちゃんは朝弱いんだから・・・」
やれやれというような顔で水色のショートヘアをした女の子が両手を腰にあてて立っている
「いやー朝だけは駄目なんだよな・・・」
「朝ご飯作ってあるから着替えたら食べてよね。私も着替えてくるから」
「はいはい。それにしても、こんなにやかましい娘嫁のもらい手いるのかねぇ・・・」
「よ、余計なお世話よ!もう・・・」
顔を赤らめて部屋から出ていく
「あっはは、お前も二十歳近いんだし、少しは考えろよー」
そう言って笑う

「そんなこと言ってるお兄ちゃんだって独身でしょ!私がいなくなったら誰が面倒みるのよ」
二人とも着替え終わり、朝食を食べつつyukiが冗談混じりで笑いながら言う
「それもそうだな・・・じゃお前を嫁にするか」
もちろん冗談だろうがものすごいことを真顔でさらっと言う
「なっ・・・」
顔が真っ赤になっている
「わはは、本気にする辺りが可愛いなぁ」
そう言って頭をこつんとこづく
「ほ、本気になんかしてないもん!」
ますます赤くなる

「それにしても、なんでお前もハンターズの格好してるんだ?お前も依頼受けてたか?」
「あ、ひっどーい!今日の依頼は私も一緒に行くんでしょ!」
頬を膨らませて怒る
「あ!そうだったそうだった。ちょっと忘れただけだって、許してくれよ」
苦笑いしながら言う
「しょうがないなぁ・・・じゃ今日の依頼で使ったフルイド代全部お兄ちゃんがおごってくれるなら許してあげようかなぁ」
ニコニコしながらyukiが言う
「お前俺が今月厳しいの知ってて言ってるだろ・・・」
頭をかかえるRALK
「えへへ、お願いね〜」
「へいへい・・・無駄遣いするなよ?」
「わかってま〜す♪」

久しぶりに総督執務室に来る。あの事件以降次期総督にはドル・グリセンという人物が入っている
「君達が今回の任務を引き受けてくれたんだな。かなり優秀なハンターズと聞いている、よろしく頼む」
「ま、なんとか期待には応えたいと思います。ところで今回の依頼の内容は・・・」
「そうか、まだ言ってなかったな。
 今回は遺跡エリアのある一角にエネミー発生の根源となるD細胞の研究データがあるのだが、それを回収してきて欲しいんだ」
「そんなことなにも極秘に、しかも多額の報酬かけてやることなんですか?」
yukiが疑問に思う
「実はな・・・そのエリアの周辺は妨害電波が発生しているようで、転送装置が使えないんだ」
「つまりリューカー、テレパイプは使えない・・・か」
「それだけではない、持ち込める武器の数や大きさも制限される」
小型の武器は空間圧縮技術によって転送装置を使わなくても持ち運びが出来るが
大型の武器は転送装置を使わないと持ち運びが出来ない
「だから大きな武器を使うレンジャーやハンターは駄目・・・ということか」
「そういう事だ。なるべく早急に頼みたい」
「わかってますよ」
二人は遺跡エリアの妨害電波の範囲外に座標設定された転送装置へ歩きだした

遺跡は相変わらずクローやディメニアンが発生しているが、数は昔ほど多くなくさくさく進める
「楽勝だな・・・お前一人で行ってみるか?」
yukiを見る
「え!?そ、それは・・・ヤダ・・・よ・・・」
一瞬ものすごい驚いた顔をしたあと、表情が曇る
「・・・怖い?」
意地悪くRALKが聞く
「ぅ・・・うん・・・」
「わっはは!冗談冗談、ほら行くぞ!」
yukiの帽子をひょいと掴むとそのまま走っていく
「あ!返してよー!」
走って追いかける

「これか・・・」
大きなPCが置いてある。それに自分の小型PCを繋ぐ

接続開始、データダウンロード・・・完了

作業はものの2分で終わった
「よし、目的達成。帰るぞー」
「はぁ〜い。お腹空いちゃった、帰ったらご飯にしよーよ」
「おう、そうだな。とりあえず引き上げよう」
と、歩き出そうとした時
「むっ、待った!前方に1体、後方に1体のエネミー反応」
前にはシノワレッド、後ろにはデルセイバーが現れた
「シノワレッドは任せた!俺はデルセイバーをやる」
「わかった!」
RALKはエクスキャリバー、yukiは赤いセイバーを持つ
「こ、このシノワレッド速い!」
「がんばれ!もうすぐこっちは倒せるからそれまで持ち堪えてくれ!」
しかし・・・
「え!?消えた!ど、どこに・・・あっ!?」
yukiががくりと膝をつき、その場に倒れる
目の前のデルセイバーを無我夢中で斬りつけ、シノワレッドを叩き壊して彼女に駆け寄るRALK
「大丈夫か!しっかりしろ!」
抱き上げると胸の辺りを刺されたようだ、血がとめどなく溢れてくる
「ご、ごめん・・・やられちゃった・・・」
傷が深く、回復の望みがないのは誰が見てもわかった
「しっかりしろ!なにか方法があるはずだ・・・」
「もう・・・いいんだよ・・・助からないのは・・・わかってる・・・。そうだ、最期に・・・言っておきたいことが・・・」
「な、なんだ?」
「知ってたんだ・・・私と・・・お兄ちゃんは・・・ホント・・・の・・・兄妹じゃ・・・ない・・・って・・・」
「嘘だろ・・・何故気付いた・・・?」
驚いた顔でRALKが言う
「ハンターズ学校にいたときに・・・聞いたんだ・・・ヒューマンとニューマンは・・・結婚が許されて・・・ないって・・・」
「そんな前からか・・・」
「でも敢えて言わなかった・・・言ったら・・・ホントに・・・兄妹じゃ・・・なくなっちゃうって・・・思って・・・
 嬉しかったんだ・・・血の繋がってない私を・・・本当の妹のように可愛がってくれたのが・・・
 だから・・・言い出せなくて・・・まだ甘えていたかった・・・から・・・」
目が虚ろになってきている
「最後まで・・・わがままでごめん・・・ね・・・楽しかった・・・嬉しかった・・・おにい・・・ちゃん・・・ホント・・・ありが・・・と・・・」
静かに目が閉じられ、ついさっきまで彼女が握っていたセイバーがカランと音を立てて落ちる
「く・・・くそ・・・ちくしょう・・・」
俺は最後までこいつを守れなかった、最後まであの笑顔を守れなかった。
あの時もそうだ・・・あの時だって俺は・・・俺は・・・
「ちくしょおおおぉぉ!!」
そう叫んだ数秒後、鈍い音がして背中に違和感を感じた
「まさか・・・まだ生きて・・・いたのか・・・!」
RALKの背中に深々とデルセイバーの剣が刺さっている
「はっ・・・はは・・・妹を・・・守れなかった・・・天罰・・・かな・・・」

数日後、遺跡の最深部で二人のフォーマーとフォニュエールが寄り添うようにして倒れているのを発見された

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