「全グループ集まったかな?みんなお疲れさま。
 今回の訓練はこれでおしまい、明日からは普通の授業に戻るからね。
 それじゃあみんなそこにある転送装置から居住区に戻ってね」
FINEの号令で生徒達が動き始める
「先生お疲れさまー!」
「いやぁリンメイさんかっこよかったんだぜー、一人でヒルデベア倒したんだからよ!」
「俺達のところなんてあの伝説の侍見ちゃったぜ!」
「おぉ!いいなぁ」
「俺なんかファルナさんのサインもらったぜ!こりゃ家宝にできるな」
「おー!すげぇなぁ・・・」
生徒達が各々の自慢話をしながら転送装置に入っていく

「4人もお疲れさま、手伝ってくれてありがとう」
リンメイ達の方へ歩いていく
「大変だったよぉ、ひとりどこか行っちゃって帰ってきたと思ったらヒルデベア連れてくるんだもん・・・」
リンメイが心底疲れた表情で言う
「またベリッサね?もうあの子はすぐ何処か行っちゃうのよ・・・」
「こっちはサイン攻めだったよ。嬉しかったけどあれはあれで大変・・・」
こちらはファルナの談
「・・・全員アンドロイドで回復が大変だった」
ジンも疲れたような表情だ
「私の方はばったりSHIONさんに会って、久しぶりに話してきたよ」
FLORAはそんなに疲れた表情は見せていない
「みんな色々あったんだね・・・」
と、FINEが次の言葉を話そうとした瞬間後ろでズシンという音がした
「な、何!?」
後ろを5人が振り向くと
「な、なにあれ・・・」
「ヒルデトゥール・・・だけど・・・」
「・・・普通の大きさではないな」
そこには通常の倍以上の大きさはある巨大なヒルデトゥールがいた
「こんなの戦ったことないよぉ!」
「当たり前じゃない!こんな大きいの見たことないわよ!」
「さしずめ森の主といったところかしら?」
「吐くメギドの大きさも2倍だったりして・・・」
「・・・冗談じゃない」
5人は戦闘体制。敵も唸り声をあげる
「よーし、一番やりー!」
リンメイがヒルデトゥールの頭を斬りつけるが、傷ひとつつかない
「っと、うわわわ!」
リンメイがジャンプして着地したすぐ目の前には断崖絶壁。下が見えないくらい深い
「こ、こわ・・・」
「フォイエ!」
ファルナのテクニックもダメージは少ないようだ
「どうすれば・・・」
「・・・地道にダメージを食らわせるしかない」
ジンのマシンガンもあまり効いていない
「なら動きを止めて少しでも楽にしな・・・きゃあっ!」
FINEがフローズンシューターを構える前に強烈な右フックが襲う。そのまま吹き飛ばされ谷に落ちる寸前で止まる
「っく・・・ごほっ、げほっ!」
「危ない!また来るよ!」
また右フックがFINEを襲う
「うわっ!?あ・・・!」
かろうじてパンチは避けたが後ろに下がった勢いでそのまま足を踏み外して谷へ
「うわあぁぁ・・・あ!?」
落ちる寸前にFINEの手を掴む赤い影
「もう絶対あの時みたいにはなりたくない!」
「FLORA!?」
「う・・・もうちょっと頑張って・・・!」
飛び付いたFLORAだが足の甲がわずかに引っかかっているだけで今にも落ちてしまいそうだ
「ダメだよ、手を離して!そうじゃないとFLORAまで落ちちゃう!」
「嫌だ!もう離れ離れになりたくない!」
「わからずや!死んじゃったら元も子もないじゃない!」
「うるさい!死ぬなら一緒に死ぬ!」
より強く手を握る
「もうやめて!FLORAにだけは死んでほしくない!お願いだから!」
「絶対やだ!ずっと一緒にいるって約束したもん!」
「見つけた、引き上げるぞ」
ジンがようやくふたりを見つけて引っ張り上げる

「は、はぁ・・・む、無理だよこんなの・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・こんなやつ本当に勝てるのかしら・・・?」
敵はうなりをあげて突進してくる
「破天神弓・・・抗魔弓術・光!」
どこからか青い閃光と共に1本の矢がヒルデトゥールに突き刺さる
「大丈夫でござるか!?」
「SHIONさん!依頼があるんじゃ!?」
「依頼というのはこやつを退治することでござるよ!」
SHIONは持っていた弓から刀に持ち替え
「飛天剣法、連環剣三式・敗天!」
敵に飛びかかり猛烈な勢いで5連続斬り
「飛天剣法奥義、飛天月牙剣!」
渾身の力を込めたひと振りでヒルデトゥールに止めをさす
「ふぅ・・・間にあってよかったでござる」
「あれ、ミヤマ流にあんな剣技ありましたっけ?」
今まで巨大なエネミーと戦っていたのが嘘のようにさらっとした表情でファルナが問う
「いや、これは遥か昔に存在した古代文明の秘技でござるよ」
「後その弓は・・・?」
今度はリンメイの問い
「いやぁラグオルの木はちょうどいい固さでなぁ・・・矢じり以外は全てラグオルの木を使って自作したでござる」
「なんかサバイバル生活してる人みたい・・・」

「さて、拙者はクライアントに報告をしにいく故そろそろ帰るでござる。皆の集もお気をつけてな」
「あ、みんなは先に帰ってていいよ、私ちょっと用事があるから遅くなるよ」
「そう?じゃあお先に帰らせてもらうよ。また今度ね〜」
SHION、リンメイらが転送装置に向かっていった。FINEとFLORAだけは帰らない
「・・・で、話って何・・・かな?突然メールなんかして・・・」
FLORAは少しの間黙りこみ、重い口を開ける
「どうして・・・どうしてわかってくれないの?ねぇ、どうしてよ!?」
「な、何が?」
「何がじゃないよ!なんであの時自分は死んでもいいなんて言ったの!?どうして!」
「だから言ったじゃない!死んじゃったら元も子もないんだよ!?それこそなんであの時あんな無茶なんてしたのよ!?
 もっと自分の命を大事にして!」
FINEが言い終わる前にFLORAが頬をはたく。FINEは叩かれた頬を押さえ唖然とする
「ばかっ!もう・・・離れ離れになるのは嫌!どうしてわかってくれないの?」
少しの沈黙の後、FINEが口を開く
「私は怖いんだ・・・あの時みたいに・・・仲間を失うのが怖い・・・。
 お願いだからこれだけはわかって、私はFLORAが嫌いだからああやったんじゃない・・・
 心配だから、大切な仲間だから、自分の身を投げてまで危険を冒してほしくない・・・それが行動に現れたの。
 大好きな人のためだから・・・」
そう話し終わるとFLORAが突然抱きつく
「私もFINEが大好きだから、絶対死んでほしくなかったから・・・もう絶対離さないからね?ずっと一緒にいるからね?ずっとだよ・・・」
言い終わると同時に泣き出してしまった
「大丈夫だよ、ずっと一緒だから」
声を上げて泣く彼女の頭をなでる
「・・・本当に?ずっとずっと一緒だよ?」
「うん、ずっとずっと一緒」
FLORAに笑顔が戻る
「やっぱりFINEのこと大好き。こんなに優しいし、頼りになるし・・・それに柔らかくてあったかい・・・」
胸に顔をうずめて頬擦りする
「ちょ・・・っ!やめなさいってば・・・もう・・・」
「えぇー、私のこと嫌い・・・?」
不安そうな表情を見せる
「そうじゃなくて・・・は、恥ずかしいよ・・・」
顔を赤らめ恥ずかしがる
「ふふっ、そういうとこも可愛くて好き♪」
「や、やめてってば・・・」
ますます赤くなる
「クスッ・・・恥ずかしがり屋さんなんだから」
「も、もう・・・帰るよ!」
恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、立ち上がり歩きだした
「あ!ま、待ってよー!」

「FLORA、何してるの?」
家に戻ってFLORAが何やらノートみたいなものを書いている
「うわあっ!?ひ、秘密だもんっ!」
FINEが覗こうとすると必死になって隠す
「えー、見せてよぉ」
「ダメったらダメーっ!」
「むー・・・まいっか、それより早く寝なよ?今日は色々あって疲れたでしょ」
「はーい、すぐ寝るから大丈夫だよ」
「うん、じゃあおやすみ」
「おやすみ〜」
FINEが部屋を出る。同時に大きくため息をするFLORA
「あー助かった・・・バレちゃうかと思ったよ・・・」
FLORAの書いていたのは日記。まだこの日記の存在を知る人は彼女以外誰もいない
「こんなの見られたら恥ずかしくて仕方ないよ・・・」
そう言いながらペンを進める

○月×日
 今日はFINEのクラスでやる実地訓練に引率で行くことになりました。リンメイ達も来てくれて、FINEもすごく喜んでたなぁ
 訓練は無事に終わったんだけど・・・生徒がみんな帰った後にものすごく大きなヒルデトゥールが現れて
 FINEが崖から落ちそうになって・・・私はあの時の事、制御塔でのことを思い出して「また独りぼっちになるのは絶対嫌!」
 その思いで彼女になんとか飛び付いて、ジンに助けてもらい二人とも死ななくてすみました。
 でもFINEに「自分の命を大事にして」って怒られちゃった・・・だけど大好きなFINEのためだもん
 例えあの時二人とも死んじゃったとしても私は後悔しなかったと思います。
 早くに両親を亡くして、私は何を生き甲斐にしたらいいかわからなくなってた。
 けどそんな時に彼女は現れた、ハンターズ学校で行われたライセンス試験の会場でひとり寂しそうに立っていた彼女を私は見つけた。
 同時に何か運命的なものを感じていました。
 次第にそれは確信にかわって「私の存在する理由って、彼女を守る事じゃないか」そう考えるようにもなりました。
 だから私は絶対何があっても彼女から離れない、絶対守るんだ

「書いてる自分でも恥ずかしいもん・・・」
ノートを机の奥の方にしまい、ベッドに潜り込む
「おやすみなさい・・・」

「なにがあっても絶対守る」これが私の・・・友への誓い・・・

おわり

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