短編小説「突然の話」

「ふーっ・・・」
ヴァーラが倒れたのを確認して、額の汗をぬぐう
黒を基調とした七分袖の上着、黒に黄色いラインが入ったハーフパンツ
短く切られ、襟足がはねたブラウンの髪、白いベレー帽のようなものをかぶっている
「近接戦闘ってこんなに大変なんだ・・・軽い気持ちで話を受けるんじゃなかった・・・」
はぁー、と大きくため息をつき扉の向こうへ歩き出した
ガーディアンズライセンスNo.10014406_03。フィロウ・ネッカート
彼女の手には大きなソードがあった。

・・・私がこの話を受けたのはつい数日前のこと。

「えっ、えっとあのー?」
話はあっという間に決まっていた。
よく話を聞けばベレッタがレンジャーに再びライセンス変更したらしく、ハンターの数が合わなくなってしまったのだそうだ。
私にとってははたはた迷惑な話なのだが・・・別にいいだろう、と今は考えている
今までのレンジャー経験も役に立たないわけではないそうで、今後ハンターとしての経験を積めば
ファイガンナーという、特殊なライセンスを取得することができるとの事。
「わ、私ハンター用の武器ひとつも持ってないですけどー・・・?」
私にライセンス変更を勧めた教官ガーディアンは既に声の聞こえないところに行ってしまっていた

自室に戻ると、小さな女性型キャストが一人、ベッドの上にちょこんと座っていた
「あれ、今日はメンテナンスの日じゃないよ?」
「いいのいいの、何となくきたかったんだもん」
ニコニコと何か嬉しそうな表情で笑う。
ベレッタ・セグウェイ。ガーディアンズに同期で入隊したいわば「パートナー」である
「ちょうどいいや・・・聞きたかったことがあったから」
そう言うとベレッタの隣に座る
「・・・またレンジャーに転職したんだって?」
「うん。さっすがお姉ちゃんは情報が早いなぁ」
決して私が姉というわけじゃないんだけど・・・なつかれる事に悪い気はしないから、別にいいかな・・・なんてね。
「さっき聞いたよ・・・まだ何か悩んでるの?」
「ううん。ただ・・・ダブルセイバーもいいんだけど、レーザーカノンとか、グレネードも面白そうだなぁ・・・って」
そんな理由で転職しちゃう辺りこの子はまだ子供だな・・・見た目もそれっぽいし。
「それでさ。もし・・・レンジャー用の武器とか余ってたら・・・貸してくれない・・・かな?
 昔持ってたやつ、ファイガンナーの時使ってたツインハンドガン以外全部パートナーマシナリーにあげちゃって・・・」
あぁ、そうか、これはちょうどいい
「もちろんいいよ。でもその代わり、ベレッタの近接武器貸してもらえない?お互い交換って事。」
「いいの!?やったー!ありがとー!」
こうして、フィロウ、ベレッタ共に武器の心配は無くなったのであった

ベレッタが帰った後、改めて交換した武器を確認する
「スピアとセイバー、ダガーにソードとダブルセイバー・・・」
ベレッタは何故か持てないダブルセイバーを所持していたのだという
「そそっかしいところもあの子らしいか・・・」
クスッと笑って武器をもう一度見直す
「とりあえずダブルセイバーは当分使えないから倉庫に入れておこう・・・
 ドゥース・ダッガズのスキルを前に教えてもらったことがあったからスピアは使おうかな」
スピア2本をナノトランサーに入れる
「後は・・・そうだ、前ヒューガさんと一緒にやった時見たあのスキルを使ってみようかな・・・
 グラビティストライクだっけ・・・?確かセイバーだったよね」
セイバーと、ハンドガンをそれぞれ2セットをナノトランサーへ。
「ダガーはどうしよう・・・片手武器だけどもうハンドガンがないなぁ・・・じゃあ、これはやめよう
 となると必然的にソードは使わないと・・・」
ソードをナノトランサーにしまう
「後ひとつ足りない・・・か。どうしようかな・・・うーん・・・」
考えているとふと、アトラスが大好きだと言っていたある武器を思い出す
「ツインダガー・・・使ってみようかな」

そして、ハンターとして初めてのミッション参加。
惑星パルムでの原生生物鎮圧が目的だが・・・

「はぁ・・・はぁ・・・これは・・・想像以上に辛い・・・」
目の前にシャグリースが数匹出現する
「このシャグリースも昔は楽だったのに・・・」
ソードを全身を使い字の如く振り回す。スキル、トルネードブレイクだ
攻撃を受け、少しひるんだのか間が空く。
しかしこのスキルの弱点でもある攻撃前後の隙をつかれる
「あうっ!」
反撃。シャグリースはスピードが速い為、すばやく背中に回られ
「あっ!うあっ!」
背中に強い衝撃が襲う。シールドラインで抑えられてはいるがそれでもダメージはかなり蓄積していた
悲鳴にも似た声を上げ、その場に倒れる
「う、うぐ・・・ソードじゃ動きが遅い・・・」
しかし、フォトンポイントの残っている武器はもうこのソード一つ。
スキルがないと倒せるような敵じゃないことは明確だ
「ど、どうすれば・・・」
よろよろと立ち上がるが、もう殆ど戦えるような状態ではない
しかし、敵はそんなことお構いなしに襲ってくる。
落ち着いて敵の数を数える。1・・・2・・・しかし、いるはずの3匹目が何処にも見当たらない
瞬間、また背中に強い衝撃を感じ倒される。立ち上がることなく振り向くとそこには
今にもとどめの一撃とばかりに突進してくるシャグリースの姿
もうダメだ。手で顔を覆い、目を瞑る

グサリと一回、何か鋭いものが突き刺さる。

痛みが無い・・・?あのままアイツが突進して・・・
あぁそうか、私はもう・・・

目を開く。しかしそこはさっきと同じ、惑星パルムの草原
慌てて体を起こし、辺りを見回す
敵がいない。さっきまで飛び回っていたはずのシャグリースが何処にも見当たらなかった
「よう。寝不足は体に悪いぞ」
声のした方を向く。そこには見覚えのある姿があった。
ジョークを放った後にする特有の笑みを浮かべるヒューマンの男性
「きょ、教官・・・」
「もう実地訓練は終わったんだからそんな堅苦しくなくていいぜ?
 ったーくシャグリースごときどうってこたねーだろうよ・・・お前らしくない」
「す、すみません・・・初めての近接戦闘だったので・・・」
下を向く。確かにレンジャーだった頃は難なく倒せていた敵だ
「まぁいいさ・・・そんな落ち込むな。せっかくプレゼントを持ってきたっていうのに」
ナノトランサーからひとつ武器を取り出した
大きい刀身。フォトンの色は白い。
「これは・・・?」
「GRM社が特定のお得意様にしか配ってない特殊な剣だ
 なんでも昔使われていた武器のレプリカモデルだそうだが、俺はあまり興味なくてな」
苦笑いしながらそれを差し出す。
興味の無いものだからくれたのだろうか・・・とも考えたが、こういうレプリカは他ではなかなか入手できない貴重品
「本当に・・・いいんですか?」
それを受け取り、再度念をおすように確認をする
「ああ、性能はあまり期待できたものじゃないが・・・悪いな」
「いえ・・・ありがとうございます」
笑顔でそう答えた。

少し間が空いて

「さて・・・帰るか」
不意にフィロウの体を抱き上げる
「きゃ!?お、降ろしてください!」
「駄目だ。それでなくても相当無理してるんだ、もう歩くのもやっとなんじゃないか?」
「ぅ・・・」
図星だった。既に歩くことはおろか、立ち上がる力もあるか定かではない
「その顔は図星だな・・・。それに、初めての近接戦闘だろう
 それにしてはよく頑張った。帰り道くらい楽してもバチはあたらないだろーぜ」
私を認めてくれたってこと・・・?
こんな言葉をかけられたのは研修生時代から一度も無かった事。
失礼にならないようなるべく驚いた表情をしないようにと意識していたが
真っ赤に紅潮した顔までは隠せなかった
「なんだ、恥ずかしいか?」
教官お得意のちょっと意地悪い、でも憎めない聞き方
「っ!!!」
しごく驚いた表情を見せた後、思わず顔を逸らす
「っはっはっは!お前にもそういうところがあるんだな、ちょっと安心したぜ」
更に顔を赤くするのであった。

あとがき
シャグリースにたこ殴りにあったのは事実だったりします(爆
フィロウを転職させた時に思いついたネタ。もちろんベレッタの転職もホントです
教官の名前など詳しいことは語られることは無いです。えぇ多分

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