届け、この想いと共に

 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
息を切らしてミズラギ保護区を駆け抜ける。
 「はー、はー・・・ちょっと疲れた・・・」
立ち止まって膝に手をつき、肩で息をするアトラスの姿
結上げていた髪を下ろし、みつ編みにしている。
服も以前の面影は無い。最近発売されたばかりの新作だ
 「もう・・・あのラッピー・・・何処に・・・いるんだろう・・・」
彼女が探していたのは大晦日の日出会った、あの喋るラッピーだった

今日はバレンタインデーだ。女性が男性に甘いお菓子と共に甘い想いを贈る、特別な日
しかし、彼女は仕事一筋で男性にあまり興味が無かった
今は仕事を頑張って、自分を磨く。何故かと聞かれた時はいつもそう答えていた
だが、その彼女はナノトランサーに「あるモノ」をしまっている
今息を切らし探しているラッピーに渡すためだ。
 「うー・・・今日もダメなのかなぁ・・・」
実は大晦日に初めて会った後、仕事の合間を縫って探しにきているのだ
いつの間にかいなくなってしまって、ろくに別れの言葉も感謝の気持ちも伝えられなかったからだ
 「何処にいるのかなぁ・・・」
あの時と同じ岩の上に腰をおろす。
 「言葉を話せないラッピーですら見つからないんだもんなぁ・・・はぁ」
うなだれる様に下を向くと、そこには此処ミズラギ保護区には似合わない色の「何か」がいた
アトラスはもっとよく見るためにサングラスを外すと、アクションを発してきたのは向こうからだった
 「あ!やっぱりあの時のお姉さんッピ」
その声色、その独特な口調、そしてその黄色い体
 「もしかして・・・ラッピー・・・」
 「ここにいれば来るかなって思ってたら、ホントにきてくれたッピ」
紛れも無い、あの時のラッピーの姿であった
その姿を見た瞬間、彼女はラッピーを両手で抱えこの間と同じように抱きしめた
 「やっと見つけた・・・探したんだからね」
 「〜〜〜っ!?」
抱きしめられたラッピーは突然の事に言葉すら出なかった

しばらくして、ようやく落ち着いてきたラッピーが
 「あ、あの・・・ボクを探してたって・・・どうかしたッピ?」
 「ああっ!?そうだ!」
未だラッピーを抱きしめたままのアトラスが何かを思い出したかのように声を上げた
すると彼女はナノトランサーから一つの箱を取り出した。
その白い箱は赤いリボンで丁寧に結ばれている
 「コレをね、渡そうと思ってたの。この間は有難う。おかげでスッキリしたよ」
ラッピーがその場でリボンをほどき、箱を開ける
中にはハート型のチョコレートクッキーがいくつも入っていた
 「お菓子ってあんまり作った事って無いから、ちょっと出来には自信ないかも・・・」
そう苦笑いするアトラスを横目に、一口食べてみると
 「・・・んんっ!?こ、これ・・・」
 「え?え?な、何か変だったかな・・・!?」
 「お・・・お・・・美味しいッピ!こんな味初めてだッピ!」
そういってもう一口食べるラッピーを見て
 「えへへ・・・ありがと」
ものすごく不安そうだった顔が一気にほころんだ

 「・・・じゃ、私は仕事に戻るね。また・・・会えると良いね」
そう言ってアトラスが立ち上がると
 「ちょ、ちょっと待ってッピ!」
 「どうしたの?」
 「これ・・・受け取って欲しいッピ」
渡されたのは今の時代には珍しい紙の封筒
封を切ると中には手紙が入っていた。アトラスはその場で手紙を読む
 「・・・クスッ。ありがと」
手紙を読み終えると、彼女はラッピーに微笑んで、その頬にそっとキスする
そして、彼女は走り去っていった

その彼女の顔は、笑顔でいっぱいだった


おわり

あとがき
いつものように季節に乗っかって約2日で書き上げたアトラス×ラッピー。
この組み合わせ結構気に入ってたりするので書きやすい書きやすい(笑
「書きやすい」と「読みやすい」は似て非なるものなので多分文章自体は・・・。
ああ・・・文才ってやっぱり誰にでもあるものじゃないですorz

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