Intrige Schwert 9話
あれ・・・? あれ・・・?
私は目が覚めた。だから、部屋を出たい――それだけ、それだけなのに
部屋のトビラに手をかけるたび、目の覚める場面に、戻ってしまう・・・
おかしい・・・どうして?
また、トビラに手をかけたら・・・。
もう、いいよ・・・
こんなコト繰り返したって、苦しいだけだよ・・・
ヒドイよ・・・誰か・・・誰か、助けて!
また、夢と同じ視界が目に映る。朝の街――城のとある部屋の中。普段は戦いで傷ついた兵士を休ませる部屋
しかし、何かが違う。具体的に何がとは言えないが、何かが。
雰囲気とでもいうのだろうか、夢の時とは何か別のモノを感じる
「ん・・・」
夢じゃない、の・・・?
目を微かに開いたまま、誰にも聞こえないような声を出す。
どうやら、今までの様な場面展開はしない――
それは、夢にはいなかった『ある人』が、私の隣で不安そうにこちらを覗き込んでいる事が何よりの証拠だった
目を開けているのか分からない位の細目を開けていたので、向こうはこちらに気づいていない
――その無防備な顔を見ているうちに、私の悪戯心が疼きだした
「・・・えいっ」
今度は聞こえる位の声と共に、その『ある人』に飛びかかった
「うにゃぁっ!?」
にやり・・・私の思ったとおり、可愛らしい反応を見せてくれた
――しかし、その後の反応は、私の予想とは少し違った。
「よかった、一晩だけで・・・」
抱きついてしまったので、その表情を見て取る事はできない
その人――リリィの安堵の声では。
* * *
どうやら私は武道に救出されて、その日の晩から翌日の朝・・・つまり今。それまで意識がなかったそうだ。
それはそうだ。あれだけ身体にダメージを受けてピンピンしている方が不思議だろう
今は自宅に戻り、レリクと話をしている。
「でも、最悪あと1日2日くらいは休むべきッス。自分が思ってる程、身体は本調子じゃない事だってありますし・・・」
確かに、一理ある内容だ。
「そうだね・・・。もう少しだけ、休ませてもらおうかな・・・」
「賢明な判断だと思うッス。この人もまた、疲れてるでしょうし」
視線を下に下ろしたレリク。リリィが私の膝を枕にして寝ているのだ。
「姉さんは、姉御と常に一緒でいたいみたいッスね。何故かは、分かりませんが・・・
とにかく、ここで姉御が大丈夫と言ってしまうと、姉さんは無理をしてでもついていってしまう。
それは、姉御も望んではいないでしょう?」
当たり前だ。それでなくても体力的、精神的な疲れが目に見えている
このまま無理をさせ続ける訳には、勿論いかない。
「くー・・・すー・・・」
それより何よりこの寝顔を見ては、当分休ませてあげるべきだと、私は感じだのだ。
「見事に熟睡してるッスねぇ・・・」
「普段は人の膝の上でここまで熟睡すること無いんだけど・・・やっぱり、相当疲れが出てるのかな」
私の膝の上でなんか寝ていたら、確実に私の悪戯の餌食になる事を彼女は知っているからだ。
今回ばかりは、流石の私でも湧き出す悪戯心を抑えたのだった――
それからまた少し話をして、レリクは帰った。
日も暮れてきているが、リリィはまだ寝たままだ。
起こすのも悪いと思いそっと膝から下ろし、そのままソファに寝かせる
「今日は久しぶりに、私がやるか〜・・・」
長らく立たなかった台所に向かう。
料理ができないわけではないが、リリィの方が上手いからという理由で、彼女に任せていたのだ。
今日は何を作ろう――そんな考え事をしながら、チラッとリリィの方を見やる
「いつまで寝てるんだろう、あの子は・・・」
もう昼過ぎからずっとだ。
「疲れてる、か・・・」
ふと、レリクの言葉が頭に蘇る。
姉さんは、姉御と一緒にいたいんッス――
姉御が無理をすれば、姉さんもそれに続きます
――勿論、そんな事は望んでないッスよね?
当然だよ。あの子に初めて会った時の事・・・
私の心は、いつしか数年前――リリィと初めて出会った時に、さかのぼっていた。
9話完