PAST OF PHANTASY5話

「・・・あ・・・メイ・・・?」
ブラックが目を開けると心配そうな顔で自分を見つめるメイの姿が見えた
意識を失った後随分長い間寝ていたように感じる。体に何かがまきついてる感触があり、手足が思うように動かない
「せ、先輩!うああ・・・ごめんなさい!ごめんなさい!」
いきなり体に乗りかかって大声で泣き出す
「いっ!?いたたたたたた!ちょ、メイ!痛い痛い!」
乗りかかられた場所に激痛が走る
「え!?あ・・・すみ・・・ません・・・」
申し訳なさそうに近くにあった椅子に座り、すすり泣いている
「おお、意識が戻ったな?一体何されたらそんな傷になるんだ?全身みみずばれと打撲
 おまけに意識は1週間しても戻らない」
部屋のドアが開いて真田と看護士が入ってくる
「いや、ちょっと・・・色々あって・・・あはは・・・いたたたた!」
起き上がろうとしたらまた激痛が走る
「お、おいおいまだ安静にしてろ。それと・・・理由までは聞かないけど、あんまり後輩を悲しませるんじゃないぞ?」
そう言いながら真田がブラックに耳打ちする
「・・・あいつ1週間前から今までずっと一睡もしないでお前の看病してたんだ
 俺がなに言っても聞かなくて・・・いつも自分のせいだ、自分のせいだって言いながらこの病室から出ようとしなくてな」
「そ、そんなことが・・・」
「だから、あんまり無茶するもんじゃない」
「いや、そうしないといけなかったの・・・理由はまたいつか話すから・・・」
「・・・何かあったのか?」
「また今度・・・話す・・・」
「わかった」
ブラックから離れる真田
「じゃあ俺はそろそろ帰るよ。時々また見に来る」
そう言って真田がいなくなった

「でも・・・はじめお二人の状態を見た時はもう助からないんじゃないかって思いましたよ
 片やメイさんは窒息死寸前、片やブラックさんは全身打撲
 ポルセニと名乗る方がお二人を抱えてきたんですがあの時はびっくりしました」
看護士がそう話す
「ポルセニって言うんだ・・・あの金髪のフォーマー・・・」
「知ってらしたんですか?」
「いや・・・意識を失う寸前に金髪でアタシよりちょっと背が高いくらいのフォーマーの姿が見えて・・・
 その後すぐ意識を失ったんです」
「なるほど・・・とりあえず腫れと打撲が治るまでは絶対安静ですからね!動いたらまた痛みますよ」
看護士も部屋から出て行った

数時間たっただろうか、メイはまだ泣いている
「あのさ・・・メイ?ごめんね・・・心配かけちゃってさ・・・」
「いえ・・・私のせいでこんなことになっちゃったんです・・・聞きましたよ、その腫れは鞭のようなもので叩かれでもしないと
 出来ない傷だって・・・それに聞こえてたんです・・・あの時先輩が私の身代わりになろうって言ってること・・・
 私がもう少し冷静な判断が出来たら・・・私があっちの道の方が近いなんて言わなかったら・・・
 先輩がこんなことにはならなかった・・・だから私のせいです、全部私が悪い、私に責任があるんです」
「メイ!アンタいい加減にしなさいよ!?そうやって溜め込んで内気になるのがアンタの悪いところよ!」
「そんなこと言われても!私の責任に変わりはありません!」
「うるさい!アタシなりの考えでこうしたの、メイは何一つ悪くない。それに勝手に死なれちゃ困るのよ
 アタシが唯一心を開ける・・・大事な相棒・・・なんだから・・・」
恥ずかしそうに言う
「え?せ、先輩今なんと・・・」
「な、なによ?聞いてなかったとでも言うわけ?」
むすっとした顔で不満そうに言うが、恥じらいから顔は真っ赤
「・・・クスッ、何でもありません」
さっきまでの泣き顔はどこへやら、涙目で笑うメイ
「変な奴・・・それと、アタシはそう簡単には死なないわよ。だから寝ないで看病するなんてバカなことしないでちょうだい」
「あ・・・知ってたんですか?あはは・・・」
「さっき真田から聞いたわよ・・・まったく・・・隣入ってもいいからちゃんと寝なさいよ。
 個室でベッドもこれ一つしかないし、アンタに風邪でもひかれたらこっちが困るわ」
そう言って人一人入れるくらいのスペースを空けるように動くブラック
「え、でも・・・」
「でもも何もない。ほら、それとも帰って寝る?」
「・・・じゃあお言葉に甘えさせてもらいます♪」
一人用のベッドより少し大きいくらいだが、それでも二人入るのにはギリギリだった

「・・・で、誰も抱きついていいとは言ってないわよ?」
ブラックにべったりと抱きついて横になるメイ
「えへへ・・・動いちゃダメって看護士さんに言われましたよね?動いたらダメですよ〜♪
 こうやって先輩に甘えてられるなんて感激〜」
「アタシが動けるようになったら覚えてなさいよ・・・」
「知りませ〜ん♪すりすり」
ブラックの肩に頬擦りする
「あーもーやめなさいってば!気持ち悪いわね!・・・まったく・・・もう・・・」
いつの間にかメイはすやすやと寝ている
「幸せそうな寝顔しちゃって・・・アタシももう寝よう・・・」

やっぱアタシ・・・この子がいないと・・・ダメみたい・・・

「・・・寝ちゃいました・・・か?」
メイが目を開ける。ブラックはすーすーと寝息を立てている
「先輩・・・でもやっぱりあれは私のせいです・・・
 私が意識を失ってから・・・こんなにされるまで耐えて・・・まるであの時の先輩みたいじゃないですか・・・
 もう・・・傷だらけの先輩なんて見たくないんです・・・苦痛に耐えるあの姿を・・・もう見たくない・・・
 私の見たいのは・・・先輩の心から笑うところ・・・喜んでいる姿・・・だから・・・すみませんでした・・・」
涙が頬を伝う。ブラックの肩に顔をうずめていたのでその部分が涙で濡れる
「・・・私も寝よう。泣いてるの見つかったらまた怒られちゃう・・・」
また目を閉じる

先輩・・・どこまでも・・・ついて行きます・・・から・・・

5話完

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