PAST OF PHANTASY6話

「やっぱり・・・いや、違うよね・・・」
意識が戻ってから1ヶ月が経った。傷もだいぶ良くなってきている
「先輩?最近ずっと変ですよ。独り言ばっかり言って・・・」
「う、うるさいわね!アタシだって色々考え事くらいするわよ」
ブラックの考え事とは
「お邪魔するよ。どうだい?傷の方は」
今この病室に入ってきた一人の男の事である
「あ、いらっしゃい。随分良くなってきたわ(またきた・・・ここ1ヶ月通い詰めよ?)」
「真田さん、今日も来てくれたんですね」
「ははは、病院の前を通ると気になっちゃってね」
真田はいつもこう言って毎日この病室にやってくる。メイは本当に気になって来ているだけだと思っているようだが
「(絶対おかしい、普通ここまでしない・・・メイに気があるのかしら?それともアタシ・・・いや、そんなことあるわけないよね・・・)」
「なんだい?そんなにジロジロ見て・・・何かついてる?」
真田がブラックの視線に不審感を抱いたようだ
「え!?あ、いや・・・なんでもない」
「・・・熱っ!」
突然メイが悲鳴をあげる
「ど、どうしたの!?」
「お、お茶こぼしました・・・」
急須が倒れてメイの手と服にお茶がかかっている
「・・・ドジ」
「おいおい、大丈夫かい?」
ブラックは呆れた顔で彼女を見る。真田はメイに近寄る
「な、なんとか・・・」
「とりあえず冷やしておいで、こっちは俺が片付けておくから」
「え?で、でも・・・」
「いいから。お茶でも火傷の危険性がないとは言いきれないだろう?」
「す、すみません!じゃあお願いします」
慌てて部屋を出ていくメイ
「全くどこか抜けてるんだよな・・・」

「あ、あのさ・・・ひとつ聞いてもいい?」
メイが出ていってから数分たった後にブラックが口を開く
「ん、どうした?」
「ここ1ヶ月毎日来てるよね・・・真田も依頼とかあるでしょ?そんなに心配してくれなくてもいいよ」
うつ向き加減に顔を伏せて話す
「なんで?俺のこと嫌いか?もしそうなら来ないけど」
「ち、違う違う違う!嫌いじゃない!嫌いじゃないよ・・・
 けど、依頼とかをけってまでここに来てるんじゃないかと思ったからちょっと心配で・・・」
ものすごい勢いで否定する
「・・・あっはは!だからさっきあんなにジロジロ見てたのか
 気にするなって、依頼は確かに受けてないけど今はそれより大切なことがあるだろう?心配するなという方が無理な話だ」
「真田・・・えっと・・・その・・・ありがとう・・・」
「わかればよろしい」
笑顔でブラックの頭をぽんと叩く
「(そんなに心配してるの・・・?こんなアタシのこと・・・
 あの時ほんの少し顔見知りになっただけなのに・・・どうして・・・?
 そんなに優しくされたらアタシ・・・ホントに好きになっちゃうよ・・・)」
自然と涙がこみあげるが、みっともないところを見せまいと必死にこらえた
「じゃあ、俺からもひとつ・・・質問させてもらってもいいかな?」
「う、うん・・・なに?」
「えっと・・・あのさ・・・その・・・お前って・・・」
妙に視線を外に向けたり頭を掻いたりと落ち着かず真田らしくない
「な、なに・・・かな?」
「お、お前って・・・」
次の言葉を言おうとした瞬間ドアがガチャリと音をたてる
「ただいま戻りました〜」
「おわっ!?な、なんだメイか・・・びっくりしたよ」
「あ・・・すみませんノックもせずに入ってきちゃって」
「いやいや、いいんだよ。じゃあ俺はこのくらいで失礼する、またくるよ」
真田が部屋を出ていく。メイは手を振り見送る。ブラックはジト目でメイを見る

「なんか今日の真田さん私がお茶こぼしてからなんか変でしたね・・・」
「そうね・・・あ、そうそうメイ、ちょっとこっちおいで」
手招きするブラック
「なんですか?」
何も疑うことなく言う通りにするメイ
「それでそこ座って、頭こっちに向けて」
「こ、こうですか?」
「うんうん。さて、覚悟はいいかしら?」
メイの頭を左腕でガッチリと押さえる
「え、ええっ!?」
「アンタのおかげで聞けなかったじゃないのよー!」
「な、何がですか!?痛い!いたたたたた!」
右手をメイの頭に思いきり押し付けてぐりぐりと
「うぇーん痛いよー!私何か悪いことしましたか!?」
「十分悪いことしてるわよ!戦犯ものだわ!」
「そんなぁ・・・」
その後ブラックの気が済むまでの数分間「頭ぐりぐりの刑」は続いた

6話完

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