PAST OF PHANTASY13話

「どうやら失敗したようだな・・・お前ともあろうやつがどうしたんだ?」
レイマーがレイキャシールに話をしている
そのレイキャシールはさっきブラックたちに襲い掛かってきたのと同一人物だろうか
「申し訳ありません。ターゲットを護衛している者がいたようで」
「ほう・・・奴に護衛か・・・一体どんな奴だ?たったの一撃でお前の装甲の75%を破壊したってのは・・・」
「レイマールとフォニュエールでした。恐らくどちらも自警団の参加者と見られます」
「そうか・・・まずはその護衛をつぶさないと厄介だな・・・
 全く、とんだ誤算だ・・・」
レイマーがため息を漏らしながらそう言う
「楊財閥の党首は奴の父親・・・本当のターゲットはそっちだが
 そのターゲットはここ最近全く姿を現さない・・・居住区のどっかに隠れてるんだろうが・・・
 そこで考えたのは奴の子供を誰でも良い、一人殺すことだ。そうすれば嫌でもターゲットは現れる
 だが奴の7人の子供は一人を除き全員権力者だ・・・どれも我が軍に僅かだが関わっている人間だ
 しかしその7人目の末っ子・・・奴だけはただのハンターズ。狙うなら奴以外いないんだが・・・」
ぶつぶつ独り言のように喋る
「どうしましょう?護衛がつくとなると私だけでは不安が残ります」
「かもしれないな・・・だからといってお前以上の実力者がほとんどいないのも事実だ・・・
 数で攻めたら確実に我々がやったことバレてしまう・・・仕方が無い、俺が行こう」
「大佐・・・危険です。他にも方法があるはずです」
レイキャシールが懸命にとめようとする
「いや、これ以上大事にすることは出来ない。第一今回の失敗でこの作戦が総督府に嗅ぎ付けられそうなんだ
 そんな非常事態に、他の連中に任せてまた失敗でもされたら、お前の命も危ないんだぞ?」
言葉を失う
「・・・わかったな、後日作戦決行日を知らせる」
「了解・・・しました」
レイマーはその言葉を聞くと部屋から出て行った
「・・・あの武器はハンターズ規格に準じたものじゃない・・・だから大佐の体じゃ絶対に大怪我する・・・
 一体どうすれば・・・どうすれば大佐に危害無く作戦を成功できるだろう・・・」
必死に考える
「・・・そうか、作戦決行日の前にあの二人を・・・まだ遠くへは行ってない筈」
何かをひらめいたレイキャシールも急いで部屋から飛び出した

「それでねー、その時に八神のやつなんて言ったと思う?」
「うーん・・・なにかしらね」
ブラックが腕を組んで草薙の問いに答えを出そうと悩む
二人はすっかり意気投合し話が随分弾んでいる
「実はね・・・八神ったら「そんなにバカに見えるか?俺・・・」だって!もうおかしくて笑っちゃったよ!」
「あっははは!それは面白い人だわね」
二人が大笑いしている後ろではまだゼロがメイにくっついている
「あ、あのぉ・・・」
「ん、どうしたの?」
「あ、えっと・・・そんなにくっついて痛くないですか?銃むき出しで持ってるからちょっと不安で・・・」
もう抱きつかれていることに問題は無いらしい
「全然大丈夫よ?そんなところまで心配してくれてるなんて優しいなぁ」
そういってまた抱きつく力を強める
「あうう・・・首絞まる・・・」
そんなやりとりをした後ふとメイが前を見ると自分の目の前、額の辺りに銃が突きつけられていた
「二人とも止まりなさい。後ろの貴女は彼女から10メートル以上離れなさい」
そう冷たい口調で話すのはさっき楊を襲っていたあのレイキャシールだった
ゼロは危険を察し言われたとおりに離れる
「え・・・あなたってさっきの・・・せ、先輩!?」
メイの目に飛び込んだのはうつ伏せに倒れピクリとも動かないブラックと草薙だった
「草薙!」
ゼロも二人に気づき駆け寄ろうとするが
「動くな!この娘の命がどうなってもいいんですか?」
ゼロはメイに銃が向けられていたことを思い出し、思いとどまった
「大丈夫、二人とも気絶しているだけです。それに用があるのは貴女でも、その草薙という人でもなく
 この二人ですから、貴女には一切関係の無いことです」
「わ、私に何の用ですか・・・?用があるなら普通に言ってくれればいいじゃないですか・・・
 何もこんなことまでしなくても・・・」
用があるという言葉にメイが反応する
「では、貴女は「死んでください」と言ったら素直に従うんですか?」
レイキャシールが真顔で放ったその一言にメイとゼロが凍りつく
「そ、それって私に死ねって言ってるんですか・・・?」
「はい。作戦遂行にあたって貴方たちの存在は危険なのです。作戦のため、護衛は先に倒しておかないといけませんから」
そう言うと右手に持った銃でメイ、左手に持った銃でブラックにそれぞれライフルを向ける
「・・・終わりです」
レイキャシールが引き金に力を入れる

パァン

「・・・あ、あれ?」
確かに銃声はした。しかしメイにもブラックにも異変は起こらない
「何が終わりなのかな?お嬢さんよ」
レイキャシールの後ろにいたのはヒューキャスト。撃つ寸前に銃身をねじ曲げていたのだ
「か、カーンさん!」
「ゼロに緊急無線で呼び出されてな、何が起きたと思ったらお前ら二人が撃たれる寸前じゃねえか」
へたへたと腰をついて、安堵感から大きくため息を漏らしうつむくメイ
「それとお嬢さんよ・・・お前の所属はもう上がっちまってるんだ。いい機会だ、自首したらどうだい?
 綾香=シス=ハムサさんよ」
「・・・それは一体誰でしょうか?人違いじゃないですか?」
「ほう・・・じゃあ人違いかどうか調べるためにもセクションIDスキャンに応じてもらおうか?
 この地区に入るのを許されているのはパイオニア自警団に所属している者だけだ
 たとえ軍の連中だとしても今はこの区画には入れない。となると
 お前は自警団の所属者、または無断制限区域内侵入か・・・そうだろう?」
「・・・」
レイキャシールは何も話そうとしない
「無言か・・・まあいい、来るんだ」
カーンがレイキャシールを連れて行こうと腕をつかむ
「は、離せ!」
突然ものすごい力でカーンの手を振りほどきテレパイプを起動する
「てめえ・・・おいこら!」
カーンがつかみかかろうとする一瞬前にテレパイプが起動し、レイキャシールが消えていった
「ちっ、奴ら逃げ足だけは速い・・・」
「カーン、やっぱりあいつで間違いない?」
現れたのは全身赤い色で包まれた一人の女性
「リコか。間違いない、例の10カ国連盟親衛隊のスパイだ。確かに自警団への登録はされているみたいだが
 まさかスパイ目的できている奴がいたとはな・・・」
「軍なんてそんなものよ。ラグオルの調査権が私たち自警団に移されて
 変な行動でもされたら困ると思っているんじゃないかしら」
「やはり政府の連中は何かを隠してるな・・・俺たちに知られちゃまずい何かを」
「そうよね・・・。それより、キミ、大丈夫?」
リコがメイを気遣う
「あ、はい・・・ありがとうございます」
「いいって。それより、お前たちも今日は帰ったほうがいい。またさっきみたいな連中に狙われるかもしれんからな
 それじゃあ俺たちは仕事の続きがあるから戻ることにする。リコ、テレパイプ忘れちまったんだ・・・頼む」
「全く・・・仕方ないわね。じゃあ、またね」
「忙しいところ呼んじゃってゴメンね」
「いいわよ。他ならぬゼロの頼みだもん」
テレパイプが起動し、カーンとリコが消えていった
「さて・・・草薙、起きてるんでしょ?わかってるのよ」
ゼロが草薙に話しかけると
「あはは・・・やっぱりゼロさんには勝てないや」
草薙が立ち上がった
「それじゃ、私たちは帰るわね。二人も早く戻ったほうがいいわ」
ゼロと草薙もいなくなった
「・・・先輩も起きてください。わかってるんですから」
メイもブラックが起きていることを知っていたようだ
「あーぁ、騙せると思ったのになぁ」
「先輩バレバレですもん。草薙さんのはわからなかったですけど・・・」
「ということは草薙より演技下手なのか・・・ちょっとへこむな・・・」
「え?あ、いや!ただ私は先輩と一緒にいる時間が多いですし、だからわかったのかもしれないですよ」
メイが必死にさっきの言葉を訂正しようとする
「まあいいわよ。アタシたちも帰りましょ、また変なのきたら困るし」
ブラックとメイも消えていった

13話完

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