PAST OF PHANTASY 23話

「ギフォイエ!」
周りに炎の壁が広がり、ディメニアンが倒れる
「そういやブラック。いつまでテクニック使うんだ?」
「へ?フォースがテクニック使わないでどうやって戦うの?」
「前の坑道での出来事、ちゃんと見てるんだからな」
真田の言葉を聞いてハッとする
「で、でも・・・やっぱり近づいて戦うのはちょっと怖いよ」
と、その言葉を放った直後にブラックが思い出したように何か武器を持ち替える
その手に持っているのは、何処か見覚えのある形をしたハンドガン
「ふふ、こっそり持ってたんだ」
「それは・・・メイの持ってたヤスミノコフか」
「ううん。これはまた違うものなんだけど・・・遺品を整理してたら見つけたの」
形はメイの持っていたものにそっくり。むしろ気がつかないほどだ
「しかし、よくそんなもの見つけたな」
「あの子の遺言にあったからね・・・」

 ・・・私がパイオニア1に持ち込んだ大きな箱
 あの中には姉の遺品の銃がいくつか入れてあるんですけど・・・その奥に一つフォース用の装備があるんです
 それ・・・もしよかったら使ってください・・・

「箱っていったら・・・コレのことよね」
坑道から戻って数日後。ちょうど遺跡に行く前日
ブラックはメイの遺したその大きな箱の前に立っていた
「こんなもの・・・よく持ってきたわね」
大きさは大の大人がすっぽり入ってしまうのではないかというほど
「確か・・・パスワードは・・・」
鍵の部分を見ると、デジタルキーロック式のようだ
彼女はそれを見つめ、メールの内容を思い出す

・・・あの箱のパスワードは・・・先輩の誕生日です・・・

何も言わずキーを数回たたき、箱を開く為のレバーに手をかける
「ホントに・・・合ってるのかな・・・」
しっかりと自分の誕生日を入れた。何度も確認した。しかしこれで合っていなかったらと思うと
「メイの残したメッセージが・・・見られないかもしれない・・・」
もし間違っていたら、メイのメッセージは一生彼女には伝わらないのだ
「・・・!」
意を決して、レバーをゆっくりとひねる

・・・

ガチャリと音がして、箱は大きく口を開いた
「よかった・・・」
大きなため息をついて、ひとまずの安堵感を手に入れる
そしてその箱の中をくまなく探す
すると、一つのカバンのようなものが入っているのに気づいた
「これは・・・メディカルセンターで使われている緊急用カバン・・・」
・・・の様に見えるが、このカバンはれっきとしたハンターズ用武器である
「こんなもの、いつ見つけたのよ・・・あら?」
ふと箱の中に目を戻すと、そこにはあるはずのない銃が一丁入っている
「ど、どうしてこれが・・・!?」
急いでその銃を手に取り、グリップを確認する
「・・・違う、文字が刻んでない・・・」
その銃はヤスミノコフ。そう、メイが肌身離さず持っていたあの銃と同じものだった
「そう・・・だよね・・・いくらアホでも・・・忘れるわけ・・・ないよね・・・」
大粒の涙がひとつ、またひとつこぼれ落ちる
「だ、ダメだよ・・・もう泣かないって・・・誓ったのに・・・」
手で涙をぬぐうが、それでもまだ涙は顔を伝い、床に落ちていく
ぬぐっても、ぬぐっても・・・涙はとまることがない
「バカ・・・アタシのバカ・・・泣くな・・・泣くな・・・!」
そう自分に言い聞かせながら、今にも大声で泣き崩れてしまいそうな自分の感情を
必死にコントロールしようとしていた

ガチャン!

「きゃっ!?」
突然大きな音とともに何かが落ちた
「び、ビックリした・・・一体何・・・?」
落としたのはさっきまで自分が持っていたヤスミノコフだった
それを拾い上げると、銃身になにやら文字が刻まれているのが見えた

”自分に負けたら、そこでおしまい”

小さな文字だったが、しっかりと刻み込まれていた
そして、その筆跡は何処か見覚えのある癖がある書き方
「もしかして・・・メイが・・・」
それは明らかにメイが彫ったものと見て間違いは無かった。
長年の付き合いだからわかる、微妙な癖ではあるが、ブラックにははっきりとわかった
「メイ・・・ありがと・・・アタシ、もう負けないからね・・・!」
カバンと、その銃を取り出した後、ゆっくりと箱を閉じた

「遺言・・・か・・・」
「うん。この銃と一緒だと、アタシはずっとメイのそばにいるんだって。そう思えるの」
二人の前に立ちはだかるかのごとく、巨大なエネミー、ダークベルラが現れる
「こいつはかなり硬そうだ・・・気をつけろ!」
「待って!アタシに任せて」
そういうとブラックは一発の弾丸をヤスミノコフに装填し、狙いを定める
「アイツの弱点は!?」
「頭を撃て!他の部分に攻撃してもあまり効果がなさそうだ!」
その言葉を聞くと、狙いを頭に定める
そして、ゆっくりと引き金を引く
「当たれ・・・!」

銃から放たれた弾丸が一直線にベルラの頭へ突き進み
そのまま着弾。ベルラの頭が粉々に吹き飛び、消えていった
「やった・・・!」

「すごいじゃないか!よくやったぞ」
真田がブラックの頭をくしゃくしゃと撫でる
「えへへ・・・ありがと」
照れ笑いを浮かべると、真田も満足そうに微笑む
「さて、八神を探すぞ」
「うん!」
敵が全滅したのかロックのかかっていたドアが開き、二人は走って進んでいく

23話完

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