PAST OF PHANTASY 24話

一方、真田とブラックと離れ離れになったゼロは
「エネミーなんか目じゃないわ・・・草薙・・・いったい何処に・・・」
強力なエネミーが殆ど出てこないため、かなり奥深くまで進んできていた
しかし、草薙の情報は何一つ無い。あるのは今手に持っている草薙の携帯型端末のみ

大きな部屋に行き着いた。いつもならここで大量のエネミーと対面するはずなのだが
「あれ・・・?エネミーが現れない」
部屋の何処を見渡してもエネミーらしき影も無く、レーダーにも何も反応が無い
それどころか、部屋の奥をよく見ると、セーフティ・ロックがすでに解除されていた
「まさか・・・この先に・・・!」
ゼロが走り出す。しかし部屋の中ほどまで行くと奥の扉のロックが再びかかってしまった
ふと後ろを見ると、後ろの扉もロックがかかっている。事実上密室状態だ
しかし、彼女は冷静だった。慎重に辺りを見回し、エネミーが現れるのを警戒していた
「何処だ・・・いつ現れる・・・」
しかし、現れたのはエネミーではなかった
紫色の髪をした、自分より少し背の低い人の姿
「く、草薙・・・!?」
それは紛れも無く、自分が探していた草薙の姿であった
しかし、いつもとは少し様子が違う
何か暗いオーラをまとい、殺気のようなものに包まれているようだ
持っているのはラヴィス=カノンではなく、紫色の不気味な光を放つ刀
「(あれは・・・草薙がラヴィス=カノン以外で唯一持つ剣・・・ヤミガラス・・・)」
その不気味な雰囲気に少し圧倒されているゼロに、草薙が突然襲いかかってきた
ゼロはとっさにピンク色のダブルセイバー、ヴィヴィアンを取り出し攻撃を受け止める
草薙はその後も構わず横斬り、縦斬りと連続して攻撃を加え続ける
ゼロは攻撃を何とか受け止めるのが精一杯。3本の指に入るといわれたフォースでも、打撃攻撃は苦手なのだ
それでも草薙の一瞬のスキを見破り刀を弾き飛ばした
「草薙!いったいどうしちゃったの!?」
「・・・」
草薙は答えない。何も言葉を発さず飛ばされた剣を拾い上げる
「草薙・・・お願い!目を覚まして!」
ゼロの言葉もむなしく草薙は再度飛び掛ってくる
少し開いた間合いから、一気に刀を大きく後ろにそらしゼロに向かって突っ走る
そのモーションを見て横斬りと判断したゼロは再び剣を打ち返そうとタイミングを見計る
しかし、ゼロの判断が今までのハンターズ生活で初めて外れた




ザクッ


「は・・・そ、そんな・・・」
ガクリとひざをつき、その場に倒れる
草薙の攻撃は予想を反して突きであった
横斬りを意識しすぎた為突きに対する構えが全くできていなかったのだ
「あれっ?わ、私は・・・」
草薙が正気に戻ったが、時すでに遅かった
「く、くさ・・・なぎ・・・」
後ろからどんなにか求めていたであろう声がして、振り向く
しかし、そこには変わり果てたゼロの姿があった。隣には自分が今までもっていた剣がある
その剣は真っ赤に染まり、それが自分の仕業であることは容易に想像がつくものだった
「ゼロさん!?ヤダ・・・嘘でしょ・・・」
「よかった・・・正気に戻った・・・のね・・・」
あまりのショックで立ち上がるのはおろか、もはや声すら出せない草薙
「あなたは・・・十分に強くなったわ・・・私が・・・あなたを過保護にしてた・・・かもね・・・
 もう私がいなくても大丈夫・・・草薙・・・パイオニア2にこのことを伝えるのよ・・・
 この星は危険だって・・・移民できるような・・・場所じゃないわ・・・」
そういい残すとゼロはかすかに笑みを浮かべ、すうっと目を閉じた
「ゼロさん・・・ゼロさん!」
ピクリとも動かないゼロの体をゆする
「死んじゃヤダ・・・ゼロさああぁぁぁぁん!」
彼女の体にしがみついて大声を上げた瞬間、自分の背中一面に大きな違和感を感じ、熱い衝撃が走った

「え・・・や・・・がみ・・・?」
突如襲った痛みは、この八神のものだった
「これで・・・私の負け・・だね・・・」
草薙は、八神が正気ではないことを知っていながら話し続けた
「全部、覚えてるんだ・・・八神と戦った・・・全部・・・
 1670回・・・835勝・・・835敗・・・でも、これで私が835勝、836敗・・・
 やっぱり八神は・・・強いんだね・・・」
「・・・よく、そんなに覚えてたな・・・」
八神が正気を取り戻した
「当たり前だよ・・・私はね・・・キミの強さに・・・憧れてたんだ・・・」
「だが、この勝負は俺の負けだ。俺はルールを破ったからな」
「そうかも・・・しれないね・・・でも、キミへの憧れは・・・次第に別の感情になってた・・・」
草薙がふらふらと立ち上がる。八神は今にも倒れそうな彼女をとっさに支える
「もう・・・遅いけど・・・スキだった・・・よ・・・」
草薙はその場に崩れ落ちた
「バカヤロー・・・今更そんなこと言うなよ・・・後悔・・・するだろ・・・」
草薙とゼロの体を動かそうと体に手をかけた瞬間

オマエの・・・チカラを・・・

「ぐ・・・なんだ!?体が・・・」
突然体が言うことを聞かなくなり、その場で固まってしまう

チカラを・・・

「う・・・おおおぉぉぉ!」
八神の頭に響くのは、闇からの呼び声。深淵から湧き出す力を求める声
「誰だ・・・てめえは・・・!」

ワタシの名は・・・ダークファルス・・・

その言葉が頭に響いた瞬間、八神の体から一切の力が抜け
「く・・・何故・・・」
その場に倒れ、霧のように消えてしまった

後に残ったのは、寄り添うようにして倒れた草薙とゼロだけであった・・・

24話完

23話へ  戻る  25話へ