PAST OF PHANTASY 25話

「はぁ・・・はぁ・・・」
「大丈夫か?」
「うん。それより、真田・・・その傷・・・」
「気に・・・するな・・・先進むぞ・・・」
真田とブラックの方は強力なエネミーが多数出現し、二人とも体力、精神力は限界だ
「だ、ダメだよ!そんな傷じゃ・・・立っているのだって辛いはず・・・」
「うるさい!八神や草薙を助けたくないのか!?」
強がる真田ではあるが足の傷は相当深いものだ
ブラックも腕に傷があるが、そこまで深くはない
「行くぞ・・・くっ!」
真田がブラックの制止を振り切って立ち上がろうとするが、やはり痛むのだろう
「無理しちゃダメ!例え歩けたとしてもエネミーと戦える状態じゃないでしょ?」
「くそ・・・わかった」
渋々座り込んだ
「・・・ごめんな、ちょっと熱くなりすぎた」
「ううん、アタシだって二人のこと助けたいって思ってるもん」
「しかし・・・どうすればいいんだ・・・」
「これだけ深い傷だと、もうメディカルセンターで治療してもらうしか方法が無いよ・・・」
二人はその場に座り込み、もはやお手上げ状態であった

暫くの沈黙が続き
「そういえば・・・さ・・・アタシね。ひとつだけ、やりたいことがあるんだ・・・」
「ん?なんだ・・・」
真田が話し始めた瞬間、突如轟音とともに地面が大きく揺れ始めた
「な、何!?」
「地震か!?危ないぞ!」
真田の携帯端末からアラーム音が鳴り始める
「これは・・・周囲のエネルギー濃度が異常値に達している・・・
 この遺跡はおろか、この星が吹っ飛ぶような爆発が起こる・・・」
「そ、そんな・・・じゃあ、アタシたち・・・」
「・・・ふっ、元々こうなるだろうとは思ってたんだ・・・
 この星は俺たちコーラルの人間が移住できるような場所じゃないってな・・・
 だから、パイオニア2が着たら引き返すように忠告するつもりだったんだが・・・その必要も無いみたいだな」
「ど、どういうこと・・・?」
「今、この星の衛星軌道上にパイオニア2が到着したと連絡が入ったんだ。彼らもそこまでバカじゃない
 この爆発を目の当たりにすれば引き返さざるを得ないだろう・・・」
地震は未だ続いている
「・・・やりたいことがあるって言ったな。できるものなら協力するよ。ただし、時間はもう殆ど無い」
その言葉を聞いて、少し考えたブラックが口を開く
「それはね・・・真田・・・」
二人の顔が近づく

「大好き・・・だよ・・・」

二人の唇がそっと触れ合った瞬間

今まで轟いていた音より更に大きな爆音が響き渡る

ものすごい光とともに二人の視界が奪われ

そして、自分の感覚さえも遠のいていく

消え行く意識の中ブラックの頭が最期に発しようとした言葉は、誰にも届くことは無かった

・・・ありがとう・・・






今までの出来事が走馬灯の様に駆け巡る



親に捨てられ、友達にも見放された辛い日々



心から信頼できた「相棒」との日々



短くそして儚く消えようとしている最初で最後の恋



それら全てが頭の中にあるスクリーンに映し出され



そしてそのスクリーンは



もう二度と光を得ることは無かった






コーラル西暦AUW3084年。惑星ラグオルに巨大な爆発が発生したことを確認

以降、セントラルドームからの交信が途絶える

事実上、パイオニア1搭乗者全員死亡。

何も知らないパイオニア2は軍部、ハンターズを使いラグオルの調査を開始することになる

そして

悲劇は繰り返されるのであった

PAST OF PHANTASY 完

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