PHANTASY FANTASY4話

ザッザッ・・・

「んー、なぜこんなにエネミーがいないんだ?さっきのディメニアン以降一度もエネミーを見ない・・・」
すでに先ほどの戦闘から1時間以上は歩きっぱなしだ、さすがに不思議だろう
「テレポーターの座標設定位置がずらされてたりとかするのかしら・・・」
「いやFINE、それはないだろ・・・海岸地区にはあそこのひとつ以外テレポーターは設置されてなかったはずだ」
RALKの言うとおり、海岸地区にはテレポーターはひとつしか設定されていないのだ
「うーん、それはそうなんだけど・・・明らかにこれはおかしいわ・・・」
「あ、あのさぁ〜、お取り込み中悪いんだけど・・・」
ACEが不意に声をかける
「ちょっと疲れちゃったよ・・・休憩・・・させ・・・て・・・」
「お、おい!大丈夫か!?」

・・・・・・・・・・・・。

「日射病と脱水症状ね・・・よくここまで我慢したわよ・・・」
「そんなにひどかったか・・・突然倒れたからびっくりしたが・・・」
2人は岩で日陰になっているところにACEをもたれかけさせる。倒れてからまだ意識は戻らない
「ニューマンは体力面で脆い部分があるから、注意してあげないとね・・・22歳と言えども女の子なんだし・・・」
FINEがそう言ってACEの口元に水を運んで含ませる
「んっ・・・う〜ん・・・」
目を覚ましたようだ。RALKとFINEがしゃがみこんで彼女を見る
「あ・・・あれ・・・こ、ここは・・・」
「ようやく気がついたのね、心配したわよ」
「ごめん・・・まさか倒れるまで疲れてるとは思わなかったから・・・」
「うそよ、日射病と脱水症状・・・本当はつらかったでしょ?怒らないから正直に話して」
「・・・」
黙って首を縦に振る、いつもの明るい表情はどこにもない
「もう我慢したらだめだぞ?休みたいときは休まないとな、無理は禁物だ」
「そうよ、これからはちゃんと言ってね、自分の体は大事にしなきゃ」
心配そうな顔で二人が言う
「ホントに・・・ごめんね・・・心配かけちゃったね・・・」
「いいっていいって。じゃあ飲み物冷やしてあるから、それ持ってくるよ」
RALKが笑顔でそう言って、走っていった

「それにしても・・・何でそんなに我慢してたの?言いにくかった?」
「ううん・・・ただ・・・弱いところを見せたくなかったの・・・」
「どうして?」
「いつもの癖なの・・・私はこの依頼があるまではずっと一人で独自にラグオルを調査してたから」
「どうして相方とかいなかったの?一人が好きだったからとか?」
「そんなんじゃないよ・・・お父さんとお母さんを探すために他の人の力は借りられないから・・・」
「両親を探しに?」
「うん・・・私のお父さんはフォニュームで、お母さんは武器製作者としてそれぞれパイオニア1に乗船したの
 私はそれからずっと一人だった・・・人と話すのが苦手とか、嫌いってわけじゃないんだけど、
 考えてることはいっつもお父さんとお母さんのことばかり・・・
 私がハンターズを目指した理由も、パイオニア2に乗船して、両親に会うことが目的だったから・・・
 必死になって戦闘の心得を学んだわ・・・お陰で2年でハンターズ学校を卒業して、すぐにパイオニア2へ
 乗船手続きをしたの、あんな事故を目撃するとは知らずに・・・」
「事故って・・・爆発事故のこと?」
うつむいて首を縦に振って答える
「あの事故以来毎日のように来ていた連絡が突然途絶えたわ・・・
 普通の人ならもう死んじゃったって考えるんだろうけど、私は諦めなかった・・・
 一人で地表を探し続けた・・・両親のメールのログを自分なりに分析して
 大体の予測をつけてね。そして海底プラントを見つけた・・・」
「あのプラントを見つけたのはあなただったのね・・・」
「敵が強すぎて中に入れなくて・・・ホントに悔しかった・・・
 数ヵ月後、オルガフロウが討伐されたと同時に海底プラントも崩壊、
 私の予測が正しければ両親はあの中で研究の手伝いをしてたはずだから・・・」
泣いているのだろうか、両手のこぶしを握り締め、頬には涙がつたっている
「自分が情けなくて・・・1ヶ月くらい泣きつづけた・・・もし死んでたとしても
 何かメッセージを残してたかもしれない・・・そう思うとつくづく親不孝な娘だって・・・」
涙がこぼれ落ちる。FINEが左隣に座り、両肩を支える
「そんなことないよ、そんなに両親のことを想うその心は絶対に届いてるはずだから」
「う・・・うええぇぇん」
FINEに泣き崩れるACE、FINEは泣いてるACEの頭を撫でながら
「私もこの星で家族をみんな失ったわ・・・だからあなたの気持ちはよくわかってるつもり・・・」
「ほ、ほんとに・・・?」
ひとしきり泣いた後、そう言った
「そう・・・だからあのときの私と似てるな・・・ってね」
「そうなんだ・・・」
「それにしても、こうしてるとなんだか妹みたいね・・・ふふっ」
「え・・・あ・・・」
FINEに抱きついたままだった事に気がつき、恥ずかしそうにしている
「いいのよ恥ずかしがらなくても、可愛い妹が出来て嬉しいわ」
そう言ってクスッと笑う
「えへへ・・・優しいお姉ちゃんが出来て嬉しいな・・・」
いつしかACEの顔に笑顔が戻っていた
「それにしても・・・RALKは何やってるのかしらね・・・」

「はぁ〜疲れた疲れた・・・ただいまー・・・」
心底疲れたという顔をしてRALKが岩陰から出てきた
「遅かったわね・・・もう寝ちゃったわよ・・・」
ACEがFINEの投げ出した足の上で気持ちよさそうに寝ている
「あらら・・・いやぁ飲み物入れたボトルを海に落っことしちまってなぁ・・・探すのに苦労したぜ・・・」
なるほどRALKの服はずいぶん濡れている
「乾かすついでに俺も昼寝でもするかな・・・と想ったけどもうこんな時間なのか・・・」
時計は3時30分を指している、この星は自転軸が傾いていないため季節による日射の長短がない
決まって6時に日が落ちる
「今日はこの辺りでキャンプでもした方がよさそうね・・・この先になにがあるかわからないし」
「そうだな・・・まあとりあえず起きたらコレ飲ませてやってな、俺は服乾かしてくるよ」
「わかったわ。この子が起きたらキャンプの準備でも始めましょ」
「了解ー、じゃ起きたら言ってくれな」

「・・・あのレイマールですか兄貴・・・」
「うむ、あいつとFLORAしか制御塔から生還したものはいないと聞いた・・・」
「えぇ・・・しかし肝心のFLORAは記憶を失っていますし・・・実質奴しか道を知るものはおりません」
「そうか・・・よし、作戦は今日の夜だ。失敗は許されないぞ」
「わかっております兄貴・・・」
「ふん・・・待っていろよ・・・シャイン・アウザー・・・まさか貴様がいるとはな・・・つくづく運が良いわ・・・ふはは」

4話完

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