PHANTASY FANTASY11話

ズバッ!
「もう!なんなのよこれぇ!」
ザシュッ!
「倒しても倒しても敵が減る気配がしねえ!」
パァン!
「むしろ増えてる・・・?」
ACE、RALK、FINEの三人は突然現れたエネミー達に苦戦していた。
敵自体は普通だが、その異常なほどの数に押されている。すでに100体以上は倒しているが終わる気配が全くない
「くそっまだ出てくるのか!」
ギルシャークとディメニアンが約20匹ずつ、部屋の奥にはダークベルラも見える
「ふたりはギルシャークとディメニアンを頼む!俺はベルラをやる!」
「了解、まかせたわ!」
RALKがベルラに突っ込み、剣を突き刺しそのまま縦に斬る。ベルラは左右まっぷたつに斬り開かれた
ザバッ!
バシュゥ!
ソードでエネミーを切り裂く音とショットの銃声が鳴り響き、ようやく扉のセーフティロックが外れる音がした
「やっと終わったか・・・それにしても凄い数だったな・・・床が血だらけだ」
フロアの床はエネミーの血痕で埋め尽されていた
「うっ・・・戦闘に夢中だったから気付かなかったけど・・・こうして見ると気持ち悪い・・・」
顔をしかめるACE
「確かに・・・早く次行きましょ」
FINEも嫌そうな顔をしている
「そうだな・・・次行くか」

部屋と部屋の間の廊下のようなところを歩いているとき
「でもなんであんなところでエネミーに遭遇したのかしら・・・よくよく考えたらおかしいじゃない・・・?」
「そう言われれば確かにおかしいな・・・しかもあれだけの数がひとつの部屋にだからな・・・
 到底自然にそうなったとは言い難いが、しかし・・・」
また新しい部屋の扉が開くとそこには
「あ・・・FLORA・・・」
「またあなたたち?早くここから立ち去りなさい、と言ってあげたいところだけど
 残念ね・・・兄貴からの指令であなたたちを殺すようにと言われてるのよ」
そう言うと見慣れないセイバーを持った
「ラヴィス=カノン・・・まだ持ってたのね」
「あなた・・・誰だか知らないけど何でそんなに私のこと知ってるの・・・?」
「本当に記憶を失ってるようね・・・これを見たらわかってくれるかな・・・
 制御塔に登る前にお守りって言って私にくれたよね・・・これ」
そう言ってFINEが髪をかきあげると青い綺麗なイヤリングが見えた
「それは・・・あ!ああ・・・!」
FLORAが何かを思い出したような表情をする
「SHAINE・・・ありがとう、今すべてを思い出したよ・・・私はあの時、制御塔から落ちたとき実は」
と言いかけたその時

「そこまでよ、ZEETの言ったとおりね・・・思惑通り・・・ふふっ」
突然部屋の奥の扉からフォマールが現れた
「さて、ここまで作戦通り・・・あとはこれを」
なにやら無線機のようなものを取り出して
「こうして・・・と」
無線機のスイッチのようなものを押した瞬間
「うっ!?うああああ!」
突然FLORAが悲鳴を上げ左腕を押さえてうずくまる
「FLORA!どうしたの!?(なに・・・ものすごい殺気が・・・)」
FINEがFLORAから並々ならぬ殺気を感じ取り2〜3歩後ずさりする
「どうせ死ぬ運命のあなたたちに特別に教えてあげるよ、彼女の左腕には洗脳装置が取り付けられていてね・・・
 そのスイッチがこれだったってワケ。あ、そうそう洗脳っていっても薬物投与だから今更装置を破壊したところで効果はないからね」
フォマールはそう言って消えてしまった
FLORAが立ち上がる
「お前達は・・・ダレダ・・・敵・・・そうだ敵だ・・・敵は・・・コロス・・・」
そういってラヴィスカノンを構える彼女の目はさっきまでの澄みきった綺麗な青い瞳ではなく
輝きを失った、濁った灰色の瞳に変わっていた
「く、くそ!こりゃ力ずくでも止めなきゃまずい」
RALKとACEが戦闘体制にはいるが、FINEがそれを手で制する
「待って・・・ここは・・・私ひとりでやらせて・・・」
悲しみをこらえているかのようにうつむいてそう言った
雰囲気を感じ取った二人は黙って装備をはずす
「なんで・・・どうしてよ・・・どうして私の周りにいた人たちは・・・みんな私の前からいなくなっちゃうの・・・
 お父さんも・・・お母さんも・・・あなたまでもが私の前からいなくなっていく・・・」
涙をこぼしながらハンドガンのアンティークモデル、ヤスミノコフ2000Hを持つ
「お前が・・・敵か・・・?」
「もう私の事がわからないの・・・?お願い正気に戻って!」
FINEの悲痛な叫びもむなしくとびかかってくるFLORA
ブンッ!ブォン!
ラヴィスカノンを振り回すが、振りが大きいため簡単に避けられる
ブウン!
ひときわ大きなスイング。その隙を見てFLORAにつかみかかり押し倒し、左手と右足で両腕を押さえ右手で銃をつきつける
「お願い!あの優しかったあなたに戻って!もうこんなことしたくないよ・・・」
銃を持つ右手が震えている。溢れる涙はFLORAの頬に落ちる
「ウウウ・・・う、うあああ!」
ドスッ
鈍い嫌な音がして、FINEの胸に剣が突き刺さる
「うっ!?・・・ぁ・・・な・・・んで・・・」
そのままドサリと横に倒れ、胸から大量の血が流れる
「くっ、くそおお!」
FINEに駆け寄るRALK
「う・・・嘘・・・いやあああああ!」
その場に座り込み、悲鳴と共に大声で泣き出すACE
「うわあああ!あ、あぐぁああああ!」
起き上がり、頭を押さえもがき苦しむFLORA
「はっ・・・はぁ・・・わ・・・私は・・・何を・・・」
目に元の輝きが戻った
「くそ!今更正気に戻ったところで遅いんだよ・・・」
ピクリとも動かないFINEを見る。胸から背中まで貫通している淡い紫色のその剣は明らかに自分の物だ
「そ・・・そんな・・・私は・・・ああぁ」
しゃがみこみ、両手で返り血を浴びた顔を覆い泣きじゃくる
「まだ終わった訳じゃねえ!メディカルセンターに転送しよう。こんなことで死なせてたまるか・・・」
彼女が転送された後、そこには思わず目をそらしたくなるほど大量に真っ赤な血が流れていた

暫しの沈黙が続き
「私は・・・剣を持つ資格なんてなかった・・・自我を失ってたとはいえ親友をあんな目に・・・」
そう言ったところでACEが歩み寄り、思いきり頬に平手打ちする
「ふざけたこと言わないでよ!あなたにはそんなこという前にやる事があるんじゃないの!?」
しかし叩かれたショックなのか痛みなのか、頬を押さえて呆然と立っている
「あ・・・ちょっと強すぎちゃったかな・・・」
「いえ・・・大丈夫です・・・私彼女のところに行ってきます。それが私にできる精一杯ですから・・・」
簡易テレポーターを出す
「じゃあ、何かあったら連絡します」
そう言って消えていった

「また・・・助けられなかった・・・」
突然ACEが喋りだした

11話完

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