PHANTASY FANTASY14話

立体映像の女性が話しかける
「これを見ているころには私は死んでるかもしれないわね・・・
 今とてつもなく危険な研究をしているところ
 本当はこのコアはあなたの剣に取り付けるために作ったんだけど・・・
 ちょっとした事情があってパイオニア1に乗る前までにコアが完成しなくてね
 これをつけてあげられなかったのが唯一の心残りかな・・・
 あなたにはずいぶん寂しい思いをさせたわね
 ごめんね・・・本当はあなたも乗せていきたかったんだけど
 上が許してくれなくて・・・」
今度は男性のほうが
「俺も父親として成長したお前の姿を見たかったな・・・
 エリー、強く生きるんだぞ・・・お前は昔から泣き虫だったからなぁ」
「ふふっ、ほんと・・・よく泣く子だったわね
 私たちがパイオニア1に乗る時もずっと泣いてたわね・・・
 最後は笑顔が見たかったけど
 あ!いけない、そろそろメモリーが危ないわね
 最後にひとつだけ、愛してるわよ・・・エリー・・・」
立体映像が消えた
「お父さん・・・お母さん・・・私は・・・私・・・は・・・」
何かいいたそうなのだが、泣き出してしまい声になっていない
「ぐすッ・・・えぐっ・・・ひっく・・・」
歩み寄るミズキ
「ほらほら、そんなに泣かないの。せっかくの可愛い顔が台無しだぞ」
「う・・・ふ・・・ふぇぇーん」
しがみついて泣き出してしまった
「あらら・・・この子はいっつもそうなのよ、両親とか、そういう話になると決まって泣き出すの
 そりゃそうよね・・・8年9年・・・ずっと一人だったんだもの、寂しいに決まってる
 私は本星にいた時からこの子の面倒見てきたのよ
 普段は手がつけられないくらい元気で無邪気なんだけど・・・」
泣いてる頭をなでながら言う
「こうしてあげるとこの子も落ち着くみたいでね、泣き出したら決まってこうしてるわ
 なんか・・・私とこの子のお母さんが被ってるみたいなのよね
 私もこうやって甘えてくる姿を見てるとなんだか可愛く見えてきちゃって」
そういって笑う
「まあ、じきに泣き止むからそれまで待つしかないわね・・・」

一方メディカルセンターでは

「まだ・・・目が覚めない・・・」
FINEの病室でFLORAが座って意識が戻るのを待っている
あの後緊急手術が行われ、手術自体は成功したのだが・・・
「意識が戻るかどうかはわからない・・・かぁ・・・」
FLORAがため息をつく
「私のせいだ・・・私のせいでこんな・・・私のバカ・・・バカ・・・」
と、扉ががちゃりと開いた
「あ・・・リンメイ、ファルナも・・・ごめんね、突然呼び出したりして・・・」
「いいのいいの!ジンも呼ぼうと思ったんだけど、いつものとおり興味ないだって・・・」
「あの人はどこに興味を持つんだろうね・・・」
「そんなことより、FINEちゃんは大丈夫なの?手術は成功したってさっき聞いたけど・・・」
ファルナが心配そうにたずねる
「あ、えぇ・・・手術は成功したんだけど意識が戻るかはわからないって・・・」
うつむくFLORA
「う〜ん、じゃあ胸の傷は治ってはいるのね?」
「それはもう完全に大丈夫だってさっき医者の方が・・・でも精神的なショックが大きかったみたいで
 それが原因で意識が回復するかわからないらしくて・・・」
しばしの沈黙の後
「もし・・・意識が戻らなかったらどうしよう・・・最近はそればっかり考えちゃって食事も喉を通らない・・・」
確かに少しやつれている
「・・・本当はこんなことするべきじゃないんだろうけど・・・もしかしたら意識が戻るかもしれない方法があるんだ・・・」
ファルナが口ごもりながら言う
「・・・え!?そんなのあるの!?できることなら私も協力するよ!」
リンメイが言う
「私もできることなら・・・」
「いや、でも・・・これは本当に成功するってわけじゃないし、失敗したらもう2度と目が覚めることはないよ・・・
 それでもいいなら・・・やるけど・・・でも・・・」
「と、とりあえずやり方だけでも教えてよ」
「う、うん・・・方法はただの気功法による蘇生魔法のようなものなんだけど・・・
 お腹のこの辺り・・・ここに集中的に蘇生魔法をかければいいんだけど・・・
 ただこの辺りのツボには蘇生法に使うツボの近くに死をつかさどるツボがあって・・・
 少しでも魔法をかける位置をはずすと・・・後はわかるでしょ?」
ちょうどへそとみぞおちの中間点くらいの場所を指して言う
「そんな・・・リスクが高すぎる・・・」
リンメイがうつむいて言う
「・・・やりましょう、それで意識が戻るなら・・・」
FLORAがどこから来るのかわからない自信に満ちた表情で言う
「え!?失敗したら2度と目が覚めないんだよ!?それならFINEの生命力を信じて待ったほうが・・・」
リンメイが驚いた表情をする
「ううん・・・私、もう耐え切れない・・・今は大丈夫みたいだけど
 一日に2回か3回ものすごく苦しそうな顔をしてうなされているの・・・」

「ぐう・・・う・・・ぜえ・・・ぜえ・・・」
「だ、大丈夫!?しっかりして・・・」
「う・・・ううっ・・・ぐ・・・は、はぁ・・・はぁ・・・」
FINEの手を両手で握り締める
「神様・・・もし彼女の苦しみを私が代わりに受けられるなら・・・
 是非そうしてください・・・もうこんな苦しそうな顔を見たくありません・・・どうか・・・どうか・・・」
「ううう・・・げほっ・・・あぐ・・・っ」

「きっとすごく苦しいんだろうなって・・・それが私にはもう耐えられない・・・
 だから・・・意識が戻っても戻らなくても、あの苦しみから解放してあげたい・・・」
「そういうことなら・・・やりましょう、最善を尽くします」
「わかった、絶対成功させようね!」
そして、ファルナがFINEのお腹に手を当てる・・・

14話完

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