PHANTASY FANTASY20話

私だって思い出したくない・・・忘れもしない、本星コーラルでの出来事・・・

「はぁー、戦争戦争って、全く飽きないものだねぇ・・・やっぱりパイオニア1に乗ってたほうがよかったかしら・・・」
髪を後ろで二つに止めたハニュエールが歩いている
「友達みんな行っちゃったんだもんねぇ・・・全く、意地張って行かないとか言うんじゃなかった」
夜の街は人通りもまばらで、ちょっと怪しい感じがする
すると
「へいへいそこのお姉さん、ちょっと遊んでいかねえかい?」
「私?(まーたチンピラか・・・)」
「そうそう、な?ちょっと来てくれって」
「すみませんね、私急いでるんで」
「おいおいつれないねぇ・・・ほら、ねーちゃんよぉ」
男が数人物陰から出てくる
「はぁ・・・急いでるんですって、今は貴方達に構ってる暇はないんです」
「これでもそんな事が言えるかな?」
数人の男が手足を押さえようとする
「・・・これから先は正当防衛・・・ですよね?」
「は?なに言ってんだ?やれ、お前ら」
縄のようなもので縛ろうとしたところを
「正当防衛開始」
手足を押さえている数人を蹴飛ばし、縄を持っている男を殴り飛ばす
「さあ、まだやるんですか?やっても結果は見えてますけど」
「ちっ・・・引き上げろ!」
「全く・・・ストレス解消でこういうことしてるけど、どうしてこうも弱いのかしらね・・・」
と、突然雨が降り出す
「うわー・・・最悪・・・あそこでいいや、ちょっと雨宿りしよう」
廃墟のような建物の中に入っていく

中は工場のようなところで、もう何年も人が足を踏み入れてなさそうだ
いたるところにほこりが溜まり、機械もかなり旧式のものだ
「こんなところがまだあるんだ・・・」
と、独り言をつぶやいた時
「誰!?」
どこかから声が聞こえた。女性だろうか
「え?誰かいるの?あ、あそこかな・・・?」
目を凝らすと建物の奥のほうに人影が見える
「何しに来たのかは知らないけど出てって!」
「ただ雨宿りしに来ただけですけど・・・って、大丈夫!?」
近づいてみるとその声の主は両手を鎖でつながれて天井に吊り下げられて腕を上に伸ばして座っていた
体は全身傷だらけ、ところどころ大きな傷も見える
首元にセクションIDが光り、耳が縦にピンと伸びているのでハニュエールとわかるが
服はズタズタに切り裂かれていて、とにかく傷だらけ。切り傷ばかりだ、しかも誰かに斬りつけられているとわかる
「こんなになっちゃって・・・ちょっと待っててね、まずは傷だけでも応急処置を・・・」
「触らないで!どうせお前もいつもみたいに私を斬りつけて喜んでるヒューマンやアンドロイドの手先だろ!?」
そういって抵抗する。抵抗するといっても腕は動かないし座っているのでほとんど動けないが
「なに言ってるの、ほら、動かないで」
「やめろ!それも何か変な薬だろう!い、痛いっ!」
薬を彼女に塗る
「消毒液だからちょっとしみるかもしれないけど我慢してね。後でちゃんと病院で治してもらわないとね・・・」
消毒液の痛みに必死に耐えるその少女は10歳前後だろうか
「ちょっと待っててね、鎖外しちゃうから」
そう言って鎖を持って力を込める
「無理だよ・・・そんなことしたところで」
「私の力ならこんなもの・・・んっ、んんっ!」
バキッという音がして鎖が壊れ、両手が自由になる
「これで大丈夫。それにしてもなんでこんなところに?」
「そんなの・・・私が聞きたいよ!何でこんなところに鎖でつながれて、毎日毎日痛みに耐えなきゃならないの!?
 私はこんなことされるために実験台にされたの・・・?」
「実験台?何かされたの?」
「私もよく知らないけど・・・何かの「遺伝子」を組み込んだとか。ほら、その時の傷」
ぶっきらぼうにそう答え、頭の後ろを見せる
「これは・・・酷い・・・」
少女の頭には大きく縦に切り開いた痕が痛々しく残っている
「この実験の最終段階だとかいわれて、この建物に連れてこられて、いきなりこんな風にさせられて
 その後はヒューマンとアンドロイドが毎日のようにやってきて私を殴ったり、斬りつけたり」
「おい、そこの女!何してるんだ!?」
振り向くとそこにはヒューマーとレイキャストがいる
「こいつらがそう?」
少女は首を縦に振る。ものすごく怯えている
「貴方達こそ何してるの?この子こんなに怯えてるじゃない・・・可哀想とか思わないの?」
「知らないな、俺達は仕事でやってるんだ」
「へぇー、少女を虐めるのが仕事ねぇ・・・貴方達の会社がぜひとも見てみたいわ」
「だまれ!それ以上口が過ぎるとどうなるかわかってるんだろうな?」
ヒューマーは刀のようなもの、レイキャストはマシンガンを持った
「贋作アギトでなにができるかしら・・・?」
パルチザンを持つ
「危ないからちょっと隠れててね」
少女は首を縦に振って機械の陰に隠れる

「やっぱりだめじゃない・・・武器選んだほうがいいわよ」
ヒューマーとレイキャストが倒れている、戦闘は3分とかからなかった
「さあ、もう大丈夫だよ。出ておいで」
「何で・・・何でそんなに優しくするの?私なんてあかの他人じゃない・・・」
「どうして?困っている仲間がいたら助けるのが当たり前でしょ?」
「仲間・・・そんなもの・・・私にはいない・・・家族も、友達も、誰一人いない
 両親はパイオニア1に乗っちゃった、友達なんて昔からいない」
「それなら・・・私のところにおいで、ね?」
そう言って手を差し伸べる
「え?で、でも・・・私なんかと一緒にいても迷惑なだけだよ・・・?」
「そんなことないって!ほら、病院も行かないと。早くしないと閉まっちゃうよ?」
「う・・・えう・・・うっ・・・」
泣き出してしまった
「ほらほら、そんなに泣かないで。あ、そうだ、名前まだ聞いてなかったね。なんていうの?」
「ACE・・・アル=クラリス=エリー・・・」
「いい名前じゃない、両親に感謝しなくちゃ。私はミズキ、本名は事情でちょっといえないんだけどね・・・」
「みず・・・き・・・?」
「そう、ミズキ。さぁ、早くしないと」
差し伸べられた手をACEが弱々しく掴む

それから私達二人はよく会うようになり、パイオニア2にも乗った
そしてあの爆発を目の当たりにした
それ以降彼女とは会わなくなったけど・・・

「おーい、先輩?どうしたのー?」
「わっ!?びっくりしたじゃない・・・」
気がつくとミズキの目の前にACEがいた
「先輩がボーっとしてるからです!RALKもyukiももう大丈夫みたいだから次に行こうって言ってるのに」
「あ、ごめんごめん。二人はもういいの?」
RALKとyukiに問いかける
「おう。一応処置はしてあるし、もう動いても全然痛みはないからな」
「私はただ気絶してただけだから全然大丈夫」
「そっか。なら大丈夫だね」
「あ、そうだ・・・その・・・FINE、ごめんね・・・自分でも制御できないんだ・・・」
ACEが気まずそうにFINEに謝る
「いいのいいの、わかってるから。でも・・・すごい怖かった・・・」
「ごめん・・・ホントごめん・・・」

この子も随分表情豊かになったね・・・昔はあんなに無愛想だったのに
ほとんど笑わなかったし、泣いてばかりだったわね・・・それほど辛かったんだろうけど

「とりあえず、残りは後二人と考えてもいいのかな」
「そうだと思います。後はFREEDとBELの二人だけだと・・・」
「じゃあ急ごうぜ、また変な援軍を呼ばれる前に片付けよう」
歩き出す12人

20話完

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