PHANTASY FANTASY21話

「あーら、意外と早かったわねぇ・・・ということはZEETもやられちゃったのね
 あの子は結構改造するの大変だったんだけどなぁ・・・」
黒い服を身にまとったフォマールが立っている
「BEL!罪もないハンターズを組織に連れ込んで不正な武器を使わせて・・・
 あなたはなにがしたいのよ!」
FLORAが叫ぶ
「あらーfloraじゃないの、随分元気になったわねぇ。
 私が制御塔から助けてあげなかったら今の自分がないことをもうちょっと知って欲しいものね」
「くっ・・・そんな昔の話・・・!」
ラヴィス=カノンを取り出す
「ちょっと待ちなさいよ、1対12はさすがに酷いじゃない・・・
 こうすればいいんじゃない?」
BELが指をぱちんと鳴らすと突然地面から針が突き出す
「うわっ!?」
SHION、KASTLE、yuki、ポルセニ、リンメイ、ファルナ、ジンの7人が針の柵に囲まれた
「そうそう変な気は起こさないほうがいいわよ?この部屋にはその針がいたるところに張り巡らされているから
 柵を壊して出てこようものなら一瞬で串刺しだから」
「俺たちだけでやれということか・・・しかし、それでも5対1、状況的には圧倒的有利なはず」
「あら?まだこれだけじゃなくってよ?」
そういった途端大量のエネミーが現れた
「例のロボットエネミーね・・・どうするRALK?」
「ここは・・・まず全員で敵エネミーの全滅を図る。3分の1くらいまで減らせたら残りはミズキに任せて
 後の4人は互いにフォローしつつBELを倒す。ミズキならできるよな?」
「出来ないこともないけど・・・エネミーを完全にそっちに攻撃させないってところまではちょっと無理ね」
「わかった、その辺はフォローしあうということで」
「さあ、お話は終わったかしら?」
BELが持つのは赤く透き通った色の杖
「ダークブリッジ・・・貴方、どこでそんな杖を?その杖は政府のごく限られた人間しか知らない超極秘事項のはずよ」
「ふふっ、あんな甘いセキュリティ、簡単に通り抜けたわよ」
「まさか・・・あのコンピュータにハッキングを仕掛けたの!?政府の情報ではハッキングの形跡は何一つないと・・・」
ミズキが驚いた顔でBELを見る。一方のBELは不敵な笑みを浮かべている
「なんだ?そんなに大変なことなのか?政府のコンピュータハッキングするのは」
「大変なんてものじゃないわ・・・並の機材、知能じゃできっこない代物よ・・・あいつ、只者じゃない・・・」
「まあ、準備もよさそうだし、始めようかしらね・・・いけ!お前達」
エネミーが一斉に襲い掛かってくる
「数はおおよそ60、強さは未知数。全力で一匹ずつ倒していったほうがいいな」
目の前に突っ込んでくるエネミーを紙一重でかわして切り倒す
「そんなことしてちゃらちがあかないわよ・・・ッ!」
パルチザンで4〜5匹をまとめてなぎ倒すミズキ
「それが出来るのはあんただけだ・・・」
「ついにあれを使う時が来たようね・・・」
FINEが取り出したのはフローズンシューター・・・となにやら大きな機械のようなもの
「頼むわよ・・・スノウクイーン・・・」
おもむろにその機械をフローズンシューターにはめ込む
撃ち出された弾丸はフォトン弾には似ても似つかない巨大な、真っ白い球体
それに当たったエネミーは次々と凍りついていく
「てやああああっ!」
ACEはフロウウェンのレプリカソードを両手にしっかり握り、自分がコマのように回転しながらエネミーを斬りつけていく
「はっ!やあっ!」
ラヴィス=カノンの衝撃波でエネミーを叩き伏せる
「はぁ・・・はぁ・・・(ダメ・・・消耗が激しい・・・)」

「よし、大体40匹程度は倒したな・・・ミズキ、後は任せたぞ」
「任せなさい。あの杖はかなり危険な杖よ、注意してね」
4人がBELの前に立つ
「あら、あんなにたくさん一人に任せちゃっていいの?こっちで強さの調節は自由にできるんだけどなぁ」
そういってリモコンのようなものを取り出す
「私、ミズキさんの援軍に行くわ。任せたよ」
FINEがエネミーのほうに走っていく

「うふふ、そうそう・・・一人より二人、二人より三人」
そう言いながら杖を掲げる
「さあ・・・準備はいいかしら!?」
杖が妖しく光る
「ラフォイエ!」
三人の中心で巨大な爆発が起き、吹き飛ぶ
「くっ・・・さっきの傷が・・・」
さっきの戦いで受けた傷から血がにじみ、白かった服が赤く染まる
「ふぅーん・・・さっき怪我してたのね。そんな体で私を倒せるとでも思ったかしら?」
杖が消え、紫に光る刀を持った。FLORAの持っているラヴィス=カノンとは形が違う
「三人より二人よねぇ・・・ウフフフフ」
不気味な笑いを浮かべRALKに走り寄り、刀を振り上げる
バシイッ!
「・・・あら、いつの間に?」
「二人より三人、仲間は守らないとね」
ACEが刀を左手で受け止めている
「仲間ねぇ・・・じゃあその仲間のために命を捧げる覚悟はできてるわよね?」
「どういう意味・・・うあっ!?」
いつの間にかBELが左手に同じ刀を持ちACEの背中を貫く
ACEはそのまま力無くうつ伏せに倒れる。刀は刺さったまま、痛々しい光景だ
「さあ、後二人・・・ぐっ!?」
BELの体にRALKの剣が下腹部、FLORAの剣は脇腹を貫通。ミズキが胸を斬りつける
「甘かったな、俺たちにはお前にないものがあった。
 それは「仲間」だ。互いを信頼し、助けあい、時には対立する。
 そんな仲間という何にも負けることのないものが俺たちにはあった。それの勝利だ」
「ふっ・・・ふふっ・・・確かに私の負けよ・・・でもね・・・上には上がいるものよ・・・
 その敵は・・・残念だけどいくらあなたたちでも・・・倒せる相手じゃ・・・ない・・・わ・・・」
BELは死んだ。謎の言葉を残して

ポルセニたちが柵を破壊して走ってくる
ジンは部屋の奥にある巨大なコンピュータをなにやら操作している。他のみんなはACEに近寄る
刀が刺さった部分からは大量の血が流れ、息も絶え絶えで横たわっている
「しっかりして!すぐメディカルセンターに」
ミズキが抱きかかえて体を起こす
「先輩・・・教えてくれたじゃ・・・ないですか・・・
 大量出血の際の・・・致死量になりうる・・・出血量・・・この量・・・は・・・それ・・・を・・・明らかに・・・超え・・・てる・・・」
以前ミズキは確かに大量出血時のノウハウを教えたことがある
「だ、だからといって放っておけるわけないじゃない!」
「いいんだよ・・・私は・・・ここまで生きた・・・ことが・・・奇跡なんだか・・・ら・・・
 あの時先輩が・・・助けて・・・くれた・・・から・・・だから・・・どうせ死ぬ・・・なら・・・先輩の・・・腕の中で・・・」
そう言うとACEが自分の持っているダブルセイバーをミズキに手渡す
「これを・・・受け取って・・・私の・・・生きた証が・・・これに・・・詰まってる・・・
 使ってとは・・・言わない・・・けど・・・先輩に・・・持ってて・・・欲しい・・・から・・・」
静かにそれを受け取るミズキ
「ありが・・・とう・・・これで・・・安心して・・・お父さんと・・・お母さんの・・・ところ・・・に・・・行け・・・る・・・
 短い人生・・・だったけど・・・最期は・・・こんなにたくさん・・・仲間がいて・・・幸せだっ・・・たよ・・・」
目を閉じ、ガクッと頭をもたげ、それきり動かなくなった
「何言ってるの・・・私の心配もしなさいよ・・・後輩に先立たれた先輩の気持ちを・・・」
ぎゅうとACEに抱きつき顔をうずめ、肩を震わせて泣くミズキ
周りは泣いていたり、やりきれない目で見つめたりしている

「・・・にげるぞ」
突然ジンが声をかける
「自爆装置が起動した。止めようとしたんだが何をやっても無駄だった」

ビーッ、ビーッ
緊急事態、この施設は10分後に崩壊します。繰り返します・・・

「全くどこかのアニメみたいなオチだな・・・仕方ない、逃げるぞ!」
仕方なくその場にACEを残し走り去る
11人がその部屋から出た瞬間部屋が崩れていく
まるでACEが早く逃げてと言っているかのように・・・
それが彼女の最後の一言だったのかもしれない

21話完

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