PHANTASY OF POEMS1話

「よし・・・これでパルムへ行けるってわけだな」
ゾンはコロニー最上階にあるガーディアンズ本部でパルムへの渡航許可手続きを済ませる
「ありがとうミーナさん」
「頑張ってくださいね。星霊のご加護があらん事を」

すぐ下の階のPPTスペースポート、パルム便発着場へ向かう
現在はSEEDの影響もあってどのシャトルも航行制限がされているようだ
「ガーディアンズの方でしょうか?」
パルム便前にいた女性に声をかけられる
「はい、そうです」
そう一言いうとライセンスを提示する
「初任務ですか?がんばって下さいね」
「ああ、そりゃどうも・・・」
ちょっと笑って見せてうやむやな返事をしてゲートを通る
ゾン自身PPTシャトルには何度か乗っている。といっても10年近く前にニューデイズへ何度か行った程度
「パルムへ行くのは初めてだな・・・」
シャトルの入り口へ進んでいった

只今当機はメルヴォア・シティ上空を航行中です
メルヴォア・シティは18年前に起きた超巨大な爆発で一瞬にして廃墟と化してしまった都市です
その大爆発はメルヴォア・エクスプロージョンと呼ばれ、今なお爆発の原因は不明です

「へぇ・・・こんな巨大な都市が一瞬でか・・・」
惑星パルムへ到着したシャトルの外に見える光景は一面の灰色
この廃墟だけでも相当な規模の都市だったことがわかる
「メルヴォア・エクスプロージョン・・・俺、あの時ちょうどホルテス・シティにいたんですよ」
「あ、そうなんですか・・・どんな感じだったので?」
シャトルの中で知り合った隣の席の人と話をしている
「突然ものすごい光がメルヴォアの方からしたと思ったら、その後すぐ巨大な爆発音がして
 何だと思ってフライヤーでメルヴォアに行ったらこのありさま・・・
 1時間前にいた都市がもう一度行ったら廃墟になってるなんて・・・驚いたってもんじゃないですよ」
「でしょうね・・・こんなに大きな街が・・・まだ信じられません」
「俺だって信じられないですよ・・・でも、これが現実ですから・・・」
PPTスペースシャトルご利用まことにありがとうございます
当機はホルテス・シティに到着致しました。またのご利用お待ちしております

「ここがホルテス・シティ・・・キャストが自治権を獲得して大きく繁栄したんだっけ・・・」
ゾンが辺りを見回すと、なるほど行き交う人のほとんどがキャストばかりだ
「とりあえず・・・ガーディアンズ支部に行くか・・・あのー、すみません」
一人の男性型キャストに話しかける
「どうしました?」
「えーと・・・ガーディアンズホルテス支部ってのは何処にあるんでしょうか・・・」
「あぁ、ホルテス支部なら東地区のフライヤーベース横の大きな建物だよ」
「わかりました。ありがとうございます」
そう言ってゾンが歩き出そうとすると
「あ、君ちょっと待って」
「な、なんですか?」
「ここではあまりキャストたちに話しかけたり、ちょっかいを出さないほうがいい。
 今回はたまたまよかったかもしれないけど、中にはキャスト至上主義といって
 キャスト以外の種族を批判したり中傷するような人もいるんだ」
「そうなんですか・・・あなたもそんな人の一人・・・ですか?」
「いやいや、俺は種族とか階級とか家柄とか、そういうので差別するのは嫌いなんだ
 だから、何かこの街で困ったことがあったら俺に相談してよ。俺も一応ガーディアンズだからさ」
そう言ってパートナーカードを渡された
「俺はレイス。レイス=アルフォードだ」
「ゾン=リライズです。じゃあ、何かあったらレイスさんにお訊ねします。それでは」
軽く一礼して、東地区へ向かった

「いらさーい、ませ!ガーディアンズ支部へようコソ」
「コロニーから実地訓練で派遣されたゾン=リライズといいます。ここで指導教官の方と合流する予定なのですが・・・」
まだゾンには指導教官のことはひとつも知らされていなかった
「えと・・・ゾンさんにメッセージが届いてマス。西地区のカフェでマテとのことデス」
受付の言葉がままならないキャストの女性から情報を受け取る
「ありがとう。ところで、その喋りはどこかの方言?」
「い、イエ・・・ワタシ、作られたばかりダカラ、言葉、上手くない、ノ」
「そ、そうなんだ・・・とにかくありがとう。カフェに行ってみるよ」
「いてらさーい、ませ!」
妙なしゃべり方に苦笑いを浮かべつつガーディアンズ支部を出た

西地区にあったのはオープンカフェだ。まだお昼には早いらしく、席もガラガラだ
「ま、適当に何か頼んで待っておくか・・・」
カウンターの前に行くと女性の店員が立っている
「いらっしゃいませ!何をお求めでしょうか?」
「え、えーと・・・パルム初めてで・・・お勧めってあるの?」
「はい!コルトバジュースはパルムにきたら是非一度お試しください!」
「じゃあ、それひとつ下さい」
「ありがとうございます!」

「ほぉ・・・結構美味いな、これ」
テーブルに座ってコルトバジュースを飲みながら色々と考え事をして時間をつぶしていた
「それにしても・・・教官ってどんな人なんだろ・・・
 教官って言うくらいだから、なんか厳しそうなイメージあるんだけどなぁ・・・・」
ため息をひとつする
「まあ・・・そのうち現れるか・・・」
そんなことを考えていると、隣から聞き覚えのある声が聞こえてくる
「あれ・・・もしかして、ゾン!?」
女性の声だ。声のした方を見ると自分よりやや背が低いくらいのビーストが立っている
茶髪のショートヘアで青色の瞳
丈の長い黒と紺色のベストっぽい服を着て、白いショートパンツと黒のニーソックス
「む・・・申し訳ないが、名前を名乗ってもらえないかな?」
何故彼がそんなことを言ったかというと、彼には最近になるまでビーストの知り合いがいなかったのだ
ガーディアンズ学校の中で何人か友達はいるが、それら全員の顔は全て記憶している
入学以前はビーストの知り合いが誰もいなかったはずだからだ
「えぇー、私のこと忘れたの?アルだよ。アル=ウェンディ。覚えてない?」
その名前を聞いた瞬間、ゾンの頭の上に大きな疑問符がひとつ浮かぶ
「いや、全然覚えてる・・・だけど、お前ヒューマンじゃなかったか?そういや声といい顔の感じといいアルそっくりだが・・・」
ゾンの言葉を聞くとアルは「あっ」と何かを思い出したように声を上げた後
「そうだった、ゾンは知らないんだったね・・・私、ビーストに種族転換したの。色々あってね」
ゾンの隣に座る
「そうか・・・それで、お前は何でこんなところに?」
「私はここでガーディアンズの実地訓練の指導教官って人と待ち合わせなんだけど・・・」
「ほう・・・そりゃ奇遇だな。俺も最近ようやくガーディアンズ学校を卒業してな、今日から実地訓練なんだよ」
「ホント!?教官って、どんな人なんだろうね!優しい人だったらいいなぁ・・・」
そう言うとさりげなくゾンのコルトバジュースに口をつける
「お、おい!」
「美味しいね、これ。さすがゾンはいいもの知ってるね!」
「まあ・・・たしかにこれは美味いよな」
一瞬の出来事だったのでゾンも怒れずにあきれ笑い
そして二人の会話が一瞬止まったその時、遠くのほうから見覚えのある顔がこちらへ歩いてくるのが見えた

1話完

プロローグへ  戻る  2話へ