PHANTASY OF POEMS 6話
結局、レリクスの安全確保は完了した。
というのは報告書の中だけでのこと。アルの怪我は幸い軽いものだったが、肝心のスヴァルタスは消えたまま。
彼らがレリクスから帰ってきたのは夕方。報告書を書き上げるともう夜おそく
ナティルの計らいでパルムにある彼女の自宅に泊めてもらうことになった。
寝静まった部屋
ふと、自分の目に光が戻る
ん・・・まだ真っ暗なんだが・・・
「う〜む・・・(この町は明るくて眠れやしない・・・)」
ホルテス・シティは夜でも明るい。そこらじゅうに明るい光が灯っていて、夜なのに昼のよう。
「(こんなんでよく寝てられるな、コイツらは・・・)」
ナティルも、その隣のミリアもすーすーと寝息をたてている
しかし、その奥にいたはずの人影が一人足りないことに気づく
「(あれ、アルがいない?)」
すこし心配になったが、きっとトイレにでも行ったのだろうと思い直し
「(草原で時間でもつぶすか・・・)」
二人が起きないようにそっと立ち上がり、部屋をあとにした
フライヤーは何か任務が無いと使用することができない。
「(ま、別にフライヤーなんか使わなくたって町の外に出りゃ草原だ。それで十分か)」
この街に唯一ある草原への出口へ向かった
「この草原だって、全部ヒトの手によって作られたんだよな・・・」
かつての惑星パルムは、長きにわたって続いた種族間の戦争によって自然はほぼ完全に破壊されてしまっていたのだ。
しかし、それをヒトの手によって何とか再生させることに成功した
現在では自然の大半が昔の、戦争が始まる前くらいまでに蘇っている
「でもやっぱ・・・人口の自然っていうのは、なんだか味気ないものだな・・・」
そんな独り言をもらしつつ街から少し歩き出す。ふと、その先にひとりの人影が見えた。岩のようなものに座っている
「誰だ・・・?」
ゾンにとっては独り言だったのだろう。しかしその声は意外と大きかった
「ひゃあっ!?ご、ごめんなさいっ!!」
まるでお化け屋敷の中にいるような悲鳴にも似た声を上げる。その声と動揺の仕方でその影が誰だかわかった
「あ、悪い悪い驚かせて・・・俺だよ、アル」
「な、なんだゾンか・・・びっくりしたなぁ」
ほっと胸をなでおろすアルの顔を見る。その瞬間今度はゾンが驚きの声を上げる
「お前・・・ヒューマンに戻ってるぞ!」
その声を聞くと、彼女は急に空を見上げ大きく息をひとつつく。微かに笑って見せるが、何か悲しい笑みだった
「もう・・・そんな時間だったんだ・・・」
涙をぬぐう様な仕草を見せた後、そのままうつむいてしまう
「ゾンは、知らないんだったね・・・私がこんな体になった理由」
よく言葉の意味が理解できない。「そんな時間」?「こんな体になった理由」?
アルは自ら望んでビーストへの種族転換を行ったのではないのか?こんな夜遅くに一体何があるのか?
「ちょっと暗い話になっちゃうけど・・・それでも良かったら、話してあげる」
静かに首を縦に振る
「ちょうど、3年前だったね・・・」
6話完