PHANTASY OF POEMS 13話

グラール太陽系第3惑星・モトゥブ
そこに埋もれている豊富な資源を目当てに、他の惑星から入植してくるものは後を絶えない
資源採掘のせいもあってか、大きな砂漠がところどころに目立つ。
主な民族はビースト。元々この星での労働力として生まれてきた種族であるからして、当然といえば当然の話。
またローグスの住処となっている場所でもあり、街によっては物々しい雰囲気を放つ場所もある

 「・・・で、今回の臨時教官はあなたなんですね」
ゾンはモトゥブのダグオラシティにて、風邪で参加できないナティルの代わりという人物と対面した。
 「そういうこと。あともう一人、ナティルが信用しているっていう人が来るみたいだから、もう少し待っててね」
彼の前にいたのは以前ニューデイズでの研修に参加したフレインだった。
ナティルの親友であり、ガーディアンズとしての能力も優秀な彼女だからこそ
今回の臨時教官としてガーディアンズ本部からも許可を得たのであろう。
 「そのもう一人っていうのは、会った事無いんですか?」
 「うん。私も初めて会う人だから・・・ナティルを信じるしかないわね」
二人は不安だった。いくらナティルが信用しているから、といえども
顔も知らない全くの他人というのは、やはり緊張する。
しかしその緊張や不安も、長くは続かないものだった
 「君たちかな? ナティルの話してた二人っていうのは・・・」
後方から声をかけられ、二人ともそちらを振り向く。
そこにいたのはビーストの男性。
 「ああ、そうするとあなたが例の・・・?」
 「やはりそうだった。俺はジリー。ジリー・ファガッド。あんまり教官というのは慣れてないんだが・・・まぁ、よろしく頼む」
少々イカツイ体格だが、ソレに似合わず・・・というより良い具合に外見と優しそうな性格がかみ合って
二人から不安や緊張はすっかり抜けてしまったというわけだ。
 「それでフレイン教官。今日はどちらへ向かうのですかな?」
ゾンが少々ふざけた口調で問う
 「今日は最近になって詳しい調査が行なわれてるトリニスタ鉱山へ向かうの。
  近々本格的な採掘作業が始まるみたいなんだけど、凶暴化した原生生物が出現し始めたみたいでね
  このまま放っておくと採掘作業はおろか人が入れなくなってしまう可能性もあるらしいわ」
 「で、それを排除するのが今回の依頼、と?」
 「ご名答。本当はもっと人数を増やしたいところなんだけど、何故か依頼主の方から人数制限がされているみたいで
  3人までの参加しか許されていないみたいなのよね・・・」
時々ではあるがこのように人数制限をされている特殊な依頼もごく稀に存在する。
 「なるほど。まーとりあえず行きましょうや。サクッと終わらせて研修終了と行きたいんでね!」

 * * *

 「しかし、まだ新しい鉱山なんて見つかるものなんだなぁ・・・もう殆どのところは採掘されてるんじゃないの?」
トリニスタ鉱山の入り口付近
ゾンは独り言のつもりで言ったその言葉にジリーが反応する
 「いや、この星はまだまだたくさん鉱山がある。だが採掘するためにコストがかかったり
  採掘できる場所が危険なところだったりして、ほったらかしにされている鉱山が数多くあるんだよ
  今回のトリニスタ鉱山も近くにディマゴラスの生息地があってね。
  もう随分前に発見されてはいたんだけど採掘には大きな危険が伴うからって調査が見送られていたんだ」
そこから少しの間があった後
 「・・・こんな危険な鉱山を掘り返したりなんかしなければ、アイツは・・・」
 「アイツ?」
 「あ、いや・・・別に。それより、サクッと終わらせて研修終了はどうしたんだ?」
ゾンは思い出したような顔を浮かべ、思わず苦笑してしまった。

このトリニスタ鉱山、元々原生生物の数は決して多くなかった
という事はつまり、凶暴化して危険なモンスターとなる生物の数も少ないというわけだ。
――だがしかし、今こうして目の前に数十匹と群がるヴァンダを見ては、そんな事も言えないだろう
 「・・・これ、全部倒せってーの?」
ゾンがあっけにとられたような声を出すのも無理はない。下手すると100匹以上かもしれないという数なのだ
そんな数のエネミーが一度に現われるというのは、今までは勿論これからも経験する事はないかもしれない
 「と、とにかく・・・1匹ずつ倒していきましょ」
フレインもあっけにとられていたが、いよいよ殲滅開始といった雰囲気だ
 「・・・いつ終わるかは、わかんないけど・・・」

 「ゾン君! 敵の真ん中に突っ込みすぎ!」
リーダー格のヴァンダを見つけたゾンはそれに集中するあまり周りを囲まれていることに気がつかなかった
 「まずい、な・・・!」
フォトンポイントの切れたツインセイバーを別のものに持ち直すと、スキル・スプレンダークラッシュを放つ
両手の剣をがむしゃらに振り回し、一瞬で取り囲んでいたヴァンダを空高く打ち上げる
そして、打ち上げられ落ちてくるヴァンダたちを更に振り下ろした剣によって弾き飛ばす
ヴァンダはそれによって次々絶命していく
ある者は切り刻まれ、ある者は岩に頭を打ち付け、ある者は吹き飛ばされた勢いで谷へ落ち――
しかし、それでも減ったヴァンダは3割程度。まだたくさんのヴァンダがこちらへ襲い掛かってくる
 「く・・・っ! これじゃ武器が最後まで持たないぜ! なんか打開策はねーのか!?」
と、不意にジリーの方を向く。アックスやソードを軽々と振り回しエネミーたちをなぎ倒している
 「ジリーさんよ! あんたビーストならナノブラストは使えないのか!?
  この状況を打開するにはそれくらいしか方法がない!」
だがジリーは、その頼みを聞く事はできなかった。
 「すまない、俺にはその能力を使う事はできないんだ」
 「んなことないだろ!? 第一ブラストバッジがあるじゃないか」
ブラストバッジとは、ビーストがナノブラストの能力を使用できるという証
遺伝子改造によって創造されたビースト種は、自分の体を獣化する事ができるのだ。
 「理由は後だ! 今は目の前の敵に集中しろ!」
その剣幕におされ、ゾンはそれ以上そのことに対して口を出す事は無くなった。
 「あっ! ゾン君後ろ!」
フレインの忠告むなしく、ゾンの頭にヴァンダの放ったディーガがクリーンヒット
 「いっ! たぁー・・・」
いかにシールドラインで守られているとはいえ、流石に直撃ではかなり痛い。
その一発で気合が入ったか、次々と襲いくるヴァンダを蹴散らしていく
単純な男とは、こんなものである。



13話完

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