PHANTASY OF POEMS 14話

フォトンとは、不思議な物である。
この世界の空間中に膨大な量のフォトンがあり、それは精神の力によって制御される
精神力のあるものならばそれらを利用する事が可能だ
勿論それはモンスターたちにも言えることであり、彼らの中にはテクニックを使用できる者もいる。
制御する者の精神力が高ければ、より強力なフォトンを操る事ができる。
しかし、そんなフォトンにも欠点がある――
それは精神錯乱状態・・・つまり、混乱状態にある時はフォトンの力を制御できなくなる事
フォトンの力を制御しきれぬまま無理矢理にその力を出力しようとすれば、当然ながらその力は思い通りに働く事はない
・・・何が言いたいかといえば、こういう事である

 「こんな戦い方もあるのな・・・なるほど参考になった」
ゾンはまっさらになった広場を見て感嘆の声を漏らす
今までそこに膨大な数のヴァンダが群れていたと思うと、本当にキレイサッパリなくなった感じだ
 「なかなか役に立つでしょ? トラップも」
自慢げなフレイン。
彼女は僅かだがトラップを使用することが可能だった
コンフューズトラップによってヴァンダたちは混乱状態に陥り、自らの放ったテクニックで自滅したのだ。
それによってかなりの数ヴァンダを削った為、殲滅が早かった
 「彼らのテクニックは強力だけど、逆手に取るとすごく有利になるのよ」
と、余裕(?)の表情を浮かべた。
しかしそれとは対照的に、少々バツの悪い顔をしているのはジリーだった
ビーストなのに、ブラストバッジをつけているのに、ナノブラストが使えないと、彼は言った。
 「なんか・・・あったんスか・・・?」
勿論、ジリーのその言葉に対する疑問符である

 「・・・殺したんだよ、仲間を、さ」

 「何故?」
 「分かっていれば、俺にも対処のしようがあるんじゃないか?」
全くだ。ゾンもフレインも何も言えなくなるのはいうまでもない
 「3年前だ。この鉱山に多くのカティニウムが眠っているという調査報告があった
  当時機動警護部で主にモトゥブ支部を担当していた、俺と2人の仲間が詳しい調査にあたることになったんだ・・・」

調査といっても、モンスターも出現報告はないとの事で、3人ともそこまで大掛かりな装備では向かわなかった。
――しかし、その報告は180度違った。多くのモンスターが徘徊し、ディマゴラスまでもが出現した
ローグスでさえも裸足で逃げると言われるほど恐れられているそれの巣が、近くにあったのだ
明らかな装備不十分――3人の中で唯一ビーストだったジリーは、なんとかこの状況を打開するべく
自らの遺伝子に宿る、古代からの力を解放した――

 「その瞬間、『俺』という意識が何処かへ失せてしまったんだ。
  気がついたら、恐怖に怯える仲間を一人、また一人と谷へ突き落としていたんだよ・・・。
  それから、俺はこの力を永遠に封印することに決めたんだ
  モトゥブの常駐警護部に自ら異動して、仲間の弔いをしながら今は仕事をしている」
ナノブラストは、身体に大きな負担をかけると共に、遺伝子自身が持つ破壊的本能が如実に発揮されてしまう
そのせいで、仲間を仲間と認識できなかったのかもしれない

・・・という仮定は、あっという間に覆されてしまった。

 「オマエたち、姉様から伝言がある」
突如、彼らの前に一人のキャストが現れたのだ。
 「お前・・・ラフォン・レリクスでスヴァルタスをマジックで消したときの!」
マジックというのは違うが、確かにその時のキャスト・・・アルテイルそのもの
 「キサマのようなヒューマンなどとじゃれ合うつもりはない」
それだけ言い放つと、ナノトランサーから何やら大掛かりな装置を取り出した
グライダーに、フォトンエンジンを取り付けたようなもの。
それを背中にジョイントすると、エンジンが起動しそのまま飛び去ってしまった
 「・・・なんだ、今の。感じ悪いな」
と、愚痴をこぼしつつアルテイルの置いていったレコーダーを拾う。
 「また録音だ・・・今度はどんな予言をしてやがるんだ、アイツは」
アイツとは、前回ニューデイズで全てを見通す完璧な予言をやってのけた謎の女性
謎のローグス『ブラッディ・スター』を率いるリーダーという情報以外、何も分かっていない。
その『謎の女性』が録音したのであろうレコーダーの再生ボタンを、恐る恐る押した――

 「フフフ・・・今ちょっとドキドキしながら再生ボタンを押したんじゃないかしら?
  大丈夫、『今回も』大した予言はしないから」
言葉から察するに、この程度の予言(?)は朝飯前なのだろう
 「そうね・・・まず、みんなが気になっている私の名前を公表しちゃおうかな・・・
  1度しか言わないから、よく聞くのよ? リベルグ・ロドフォーム。覚えたかしら?
  それとジリーさん。さっきお話していたあの時の事件、実は私も1枚かんでるのよ
  あの時、ディマゴラスに特殊な薬品を散布しておいたの。それはね、ある種の覚醒剤に近いものなんだけど
  ナノブラスト中のビーストが服用すると、破壊本能が自我を押しのける位影響力が強くなるんですって。
  そうそうゾン君、風邪ひいたナティルちゃんの面倒見るなんて、優しい子なのね〜。私もそういう子が欲しいわ♪
  じゃあ、また今度会いましょ。バイバーイ」
それきり、レコーダーから音はしなくなった。
 「コイツは俺のストーカーかっつーの・・・なんでそんなこと知ってるんだ」
不満そうなゾン。しかし、彼以上に――いや、不満などという感情はとうの昔に通り越し
果てしない怒りをあらわにする者もいた
 「あれは、この女のせいだった・・・だと・・・!?」

ジリーの怒りは頂点に達し、鉱山全てに響き渡るかの様な雄叫びをあげた――



14話完

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