PHANTASY OF POEMS 15話

 「・・・ゾン、どうしたんですか?」
ガーディアンズ宿舎の、自室に戻った途端紅蓮が心配そうに話しかける
 「なんでもないよ。それより紅蓮・・・ローグスのブラッディ・スターについて、何か知ってる事はないか?」
さらっときりかえし、さっき出会ったローグスについての情報を聞こうとする
この間腕が生えたといったばかりだが、今はさらに進化し人型の、メイドのような格好をした女の子になっている
パートナー・マシナリー最終進化形態のひとつ、GH-410だ。
紅蓮は、少し考えるような間の後
 「確か、4大ローグスのひとつでもある巨大かつ強力な組織だったと記憶してます。
  ですが、SEEDの飛来が始まる前までは全くの無名ローグスでした
  SEEDの落着後、指揮官やその他幹部たちがごっそり入れ替わってしまったようで、そこから一気に繁栄したそうです。
  自らの目的達成のためには、手段を選ばない・・・という、かなり危険な信条のもと行動しているとか。
  指揮官は女性ですね。しかもヒューマンです。名前は・・・」
 「リベルグ・ロドフォーム、だな?」
 「当たりです。彼女はSEED飛来時に突如姿を現し、その天才的頭脳で無名ローグスを一気にここまでのしあげました――」
ゾンは紅蓮から、このローグスについて多くの情報を手に入れた。
組織のナンバー2とも言える総幹部はアルテイル・ロドフォーム。ラフォン・レリクス、トリニスタ鉱山で遭遇したキャストだ。
もう一人いる幹部の名はレヴィン・メルサデル。ラフォン・レリクスでアルをいとも簡単に倒したあの巨人だ
 「私の知っている情報は、この位ですね・・・お役に立てましたでしょうか・・・?」
 「ああ、バッチリだ。それと、華桜聖 風舞という女について情報はないか? コイツもブラッディ・スターの一員らしいんだが・・・」
その言葉を聞くやいなや、紅蓮は素っ頓狂な声をあげた
 「それ、本当ですか!? 華桜聖といったら今ニューデイズ政府が総力を上げて捜索している人間の一人ですよ
  何故かは知りませんけど、連れてきた者には3億メセタの報酬があるとかで・・・賞金稼ぎが今も探しているらしいんです」
これにはゾンも驚かされた。ニューデイズで、あんなに堂々と自らの名前を名乗り、自分の居場所まで教えてしまったのだ
そんな人間が、よもや政府が動くほどの人物とは思うはずもない。
 「なら、奴らのアジトをつかめれば・・・!」
 「それは、ちょっと無理ですね」
淡い期待は一瞬にして打ち砕かれた
 「ブラッディ・スターは少数精鋭なんです。全メンバーがひとつの宇宙船に入りきってしまう数しかいないそうで
  アジトイコール宇宙船・・・動く要塞です」
 「そうか・・・。貴重な情報、ありがとうな」
 「いえいえ♪ でも、どうしてそんな事を・・・?」
紅蓮が不思議に思うのも無理はない。彼女には未だ何一つ今の状況を話していないからだ
リベルグにストーキングにも近いマークを受けていること、仲間が危険な目にあわされた事・・・
 「いや・・・少し、気になっただけさ」
マシナリーの情報網は相当に広い。マシナリー達はそれぞれ仲の良い者同士交信しあっているからだ。
という事はつまり、彼らに今こんな事を教えてしまっては、また危険が増えるかもしれない――
そう思い、この情報は胸の奥にしまう事にしてあったのだ――

 ピピッ

ふと、電子音が部屋に響く
 「メールか・・・誰だ?」
送り主はどうやらナティル。
 『明日、メルヴォア・シティ地下の研究施設に大掛かりな掃討作戦が展開されるらしいの
  何やら、実験用に飼育されていた大型の原生生物たちが突然凶暴化して逃げ出したんだって。
  私も参加するんだけど、もしよかったらこれないかな? 正式ライセンス取得のお祝いもしたいし♪』
 「・・・ライセンス取得祝いがこんなに危ないミッションって、なんだかなぁ」
少し苦笑い。
 「でも、こんな短期間で正式ライセンスを取得できるなんて、すごい事ですよ
  普通だったらもっと長くてもおかしくないはずですから」
そう言うと、紅蓮が赤いリボンで包まれた小さな箱を差し出す
 「・・・なんだ?」
 「え、えっとその・・・私からも、正式ライセンスのお祝い・・・です」
かすかに顔を赤らめる彼女に、ゾンは少し笑いながら
 「おっ、そうかーありがたいな! 早速開けさせて頂いて・・・」
リボンを丁寧に解き、箱のふたを開ける――
 「これは・・・ショック/レジスト?」
 「き、気に入って、頂けましたか・・・?」
恐る恐る聞く紅蓮に、ゾンは彼女の頭をなでながら
 「勿論。ありがとう、大切にするよ」
 「は・・・はいっ!」
満面の笑みで応える紅蓮であった。

このプレゼントが、後々カギを握ることになるとは誰も知る由がない――



15話完

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