PHANTASY OF POEMS 22話

アジトの中とは思えない、長い廊下を走るゾンとナティル
 「メインコンピュータなんて・・・何処にあるんだ・・・」
 「地図から見たら、もうすぐなはずなんだけどぉ・・・」
途中、ローグスの下っ端と何度も遭遇した。
結局下っ端は下っ端なので、情報など聞きだす事もできない。
ただ、ジェイが渡した地図を頼りに走るしかなかった。
今回はナティルが先を走っているので、ゾンの方向音痴は影を潜めている。
 「ん・・・? 広いところに出そうだぞ」

そう言うが早いか、二人は大きな広間のような場所にたどり着いた
その中心には、巨大なタワーのようなものが様々な光を発している。
高さにして5〜6メートルはあろうかというくらい。
 「どうやら、ビンゴだな・・・」
目当てのメインコンピュータ――それを破壊すべく、ゾンはそれに近づき、アックスを取り出す
 「ま、とりあえずぶっ壊しますか・・・!」
コンピュータの前に立ち、斧を振り上げたまさにその時だった

 「待ちなよ。それに手を出した瞬間、お供の首が吹っ飛ぶよ?」

ハッとしてゾンが後ろを見ると、ナティルの首にナイフが突きつけられているのが見えた
しかも、そのナイフを持ち、ゾンに向かって叫んだのは
 「ふ、フレイン・・・なん、で・・・?」
ナティルの大親友、フレインの姿だった。
 「フン・・・お前がバカで助かったよ。あぁそうさ、アタシはブラッディ・スターのスパイ
  お前らの行動を逐一報告してたってわけさ。わざとナティルに近づいてな・・・」
まさに悪魔のような表情。
今まで仲間だとばかり思っていたフレインが、本当は敵のスパイだったのだ
しかも、ナティルは純粋に親友だと思い込んでいた・・・ゾンとしてはフレインをマークできる要因がひとつもなかった。
 「ゾン。お前の力のほぼ全ても報告に上げてある。
  このバカの教え子だっていうから、本当に詮索がしやすかったよ」
嘲笑。
それが意味するのは、全てフレインの策略どおりということ。
 「さて・・・まずはこいつの首を掻っ切ってから、お前を始末するとしようか」
フレインの持つナイフが、ナティルの首により一層近づく――
声すら発せないナティルが、真っ白な頭で考え出した答え――
 「・・・なっ!?」
 「やった!」
ゾンが思わず歓声を上げる。
ナイフを持った腕に、ナティルが噛み付いたのだ
勿論驚いたフレインはナイフを落とす――すかさずそれを蹴飛ばし、一先ずの危険は去った。
 「く・・・っ、ナメた真似を・・・!」
それにいきり立ったフレインが、今度はナティルの首を締め上げる。
ナティルも必死に抵抗するが、全く歯が立たない・・・相当頭にきていたのだろう
 「は・・・ぁ・・・ぅ・・・っ」
歯を食いしばっていたナティルの顔が、ガクッと力無く下を向いた。
気を失ったナティルを、振り払うようにして突き飛ばした後、ゾンの方へ視線を向ける
 「あんまり長いこと、そこに突っ立ってるとねぇ・・・」
ゾンは戦闘体勢。真剣に相手と立ち向かうときは、言葉を発しない。
その代わり彼の周りには、異様なオーラが発せられる。雰囲気で語っているのだ。

しかし、本当の敵はフレインではなかった。

背後のコンピュータから、バチッという音が聞こえた直後
 「うおおぉっ!?」
全身に激しい衝撃が走り、体に力が入らなくなる・・・必然的にその場に倒れこんだ。
 「死ぬことはないけど、当分身体は動かないわ。
  せいぜいそこで反省するのね。アタシらに歯向かった事を。」
またあざ笑うような笑みを浮かべ、その場から消えてしまった。


フレインが去った後、すぐにゾンは起き上がった。
 「紅蓮のヤツに、助けられたな・・・」
その手に握られていたのは、ショック/レジスト
ライセンス取得のお祝いに、紅蓮から渡されたものだった。
彼女への感謝をしつつ、ナティルを抱き起こす
 「ナティル・・・?」
反応がない。
死んでいるわけではないようだが、すぐに意識が戻りそうな気配も無かった。
親友が、敵のスパイ・・・更に、躊躇無く自分を殺そうとしたのだから、ショックはあまりにも大きい。
それを考えると、当分は意識が戻らないだろう・・・という考えがゾンにはあった。
 「じゃ、本来の目的に戻りますか・・・って」
ゾンがコンピュータを一目見た瞬間、目の前の光景に彼は大きな疑問を抱えた。

 「なんで、コンピュータがケムリふいて壊れてんだ・・・俺、何にもしてないぜ?」
ゾンのいうとおり、目の前の巨大な機械は全て煙を噴出し、たくさん点滅していた光も殆ど全てが消えている。
 「目的を終えたら、自爆するように仕掛けてたのか・・・?
  ということは、既に実験データは・・・」
急に力が抜けて、その場に座り込んでしまった――


22話完

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