PHANTASY OF POEMS 25話

ニューデイズの大地を赤く染めたのは、炎侵食のSEED
周囲の原生生物たちが突然変異を起こし、更に被害が増えてきている。
大勢のガーディアンや同盟軍が浄化作業に当たるものの、飛来数は一向に減る兆しがなく、作業は難航を極めていた。
飛来が始まって半日も経っていないが、すでに甚大な被害、犠牲者が出ていた。




しかし、彼らだけは浄化作業にも、救助活動にも加勢していない。
――いや、『できない』というほうが正しいだろう。
 「クソ・・・こっちだ!」
真っ赤に染まるオウトク・シティを全速力で走るゾン
まだ町までSEEDフォームが侵攻していないので、ここまで戦闘は一度も無い。
 「はぁ、はぁ・・・どこまでいくの・・・ッ!」
ゾンの後ろには、アルとミリアが続いている。
 「フライヤーが使えないんだ! そうなりゃ・・・」
ふと行き止まりのフェンスに到達し、ゾンが急ブレーキをかけて止まった。
慌てて後方の二人もブレーキをかけるが、危うくフェンスを飛び越えてしまいそうになった。
そのままフェンスの下を見やると、水の上にバイクのようなものが浮かんでいる。
 「これを使うっきゃねーだろ」
フェンスを飛び越え、バイクに飛び乗った。
勝手に使っていいのかなどと考える余裕は一切無かった。



水上バイク――フローダーを駆り、向かった先はシコン諸島
以前、ゾンがニューデイズの研修にやってきたところだ。
しかし、今はその当時の様相を見ることは出来ない。
赤く、SEEDの侵食した大地が広がっているからだ。
 「何故、こんなところに・・・?」
 「まあ、じきにわかる」
と、ゾンが一歩歩き出そうとした瞬間
 「にゃにゃにゃにゃ〜〜〜!」
突如ゾンたちがフローダーから降りた地点と同じ場所に、もうひとつのフローダーが猛スピードで突撃してくる。
そして、そのままノンブレーキで岸に直撃――当然だがフローダーはバラバラである
フローダーの破片と一緒に、二人のヒトが岸に落ちてくる。
 「あたぁ〜・・・」
 「もう、姉ちゃんにハンドル持たせない・・・」
まさに猫まっしぐらな女性と、ニューマンの男性の二人
 「相変わらずぶっ飛んでやがるな・・・」
紛れもない、キャティとレインのバステト姉弟である。
一人用のフローダーに無理やり二人乗りしたらしい。よく無事故(?)でここまできたものだ。
 「お、おひさしぶ・・・」
 「ゾンクン久しぶりにゃ。ウチらも手伝うにゃ」
いきなりグロッキーなレインを押しのけて、キャティがご挨拶。
苦笑しつつ迎えるゾンたちであった。
 「さあ、急ぐぜ」
すぐ真剣な表情に戻り、走り出すゾンに慌ててついていく。

おおよそ1キロくらい走り、また急ブレーキをかけるゾン
しかし、今度は勢いあまって飛び出すものはいなかった。
 「お待たせしました」
彼の前に、二人の人影。
 「敵はもう目の前だ」
 「そして、『本隊』の到着ももうじきだね」
ジリーとレイスであった。
 「えっ・・・『本隊』って・・・?」
不思議そうに問うアルの言葉が皆の総意であることにどうやら違いは無いようだ
確信の目で空を見るゾン以外の、ではあるが。
 「いままでのSEEDはまだ序の口・・・これから、俗に言う主力部隊がお出ましだそうだ」
 「調査部が一部のガーディアンにのみ流してる情報だよ。あと3時間も無いらしい
  場所は・・・ちょうどこの先、島の中心部」

それだけ言えば、もう言葉は必要なかった。
島の中心部に向かって、全速力で走りはじめた。


終焉のタイムリミットが、刻一刻と近づきだした。


25話完

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